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北米

2026.09.03 13:30

米財務省の対イラン新制裁は封鎖ではなく競売、値がつくのは「ドル決済の権利」

K I Photography - stock.adobe.com

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米財務省は米国時間8月28日、エジプト第2位の銀行バンク・ミスル(Banque Misr)をめぐり、アラブ首長国連邦(UAE)に置かれた拠点を米ドル決済の仕組みから切り離す規則案を示した。財務省の推計によれば、標的となったUAE拠点は2024年1月から2026年6月までに、イランが制裁を逃れるために使う「影の銀行」網に属する疑いのある103社のため、約18億ドル(約2862億円)を処理していた。規則案への意見公募は、連邦官報に掲載された日から30日間続く。連邦官報への掲載は、8月30日の時点でまだ行われていなかった。

今回の規則案は、スコット・ベッセント財務長官が8月24日に打ち出した対イラン制裁強化策「エコノミック・アウトキャスト作戦(Operation Economic Outcast)」のうち、銀行そのものへ向けられた最初の一手である。ベッセントは発表の場で第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦(Dデー)を引き合いに出し、テヘランを支える「あらゆる経済的な生命線を断ち切る」と約束していた。

ただし用いられたのは、最終的な規制へ至る前段階にあたる規則案という形式にすぎない。作戦初日に財務省が発動済みの制裁指定へ、さらに重ねられたものだ。戦略を雄弁に語るのは勇ましい言葉ではなく、誰を標的に選んだかという事実である。中国はイラン産原油の約90%を歴史的に買い上げてきたと、ベッセント自身が指摘している。その中国へ向けられてきたのは、これまで言葉と外交だけだ。トランプ大統領は各国首脳へ電話をかけ、テヘランとの取引を断つよう具体的に求めている。そして規則案を受け取ったのは、エジプトの国営銀行だった。

対イラン制裁で米財務省が最初に切る相手は、ドバイや香港にある小さな拠点

発表の下には、3つの設計上の判断が隠れている。打ち出しが派手だったことよりも、そちらのほうがはるかに重い。1つ目は、二次制裁が降りかかる前に各国へ与えられる是正の猶予である。ベッセントは「悪い行いを改める機会」を全員に与えると述べ、当局者の説明では国ごとに期限が切られている。

2つ目は、制裁を科す順番があらかじめ決められていることだ。最初の制裁指定が向かった先は、イラン産原油を最も多く買い付ける相手ではない。ドバイの支店長、香港のペーパーカンパニー、中堅金融センターに開かれたコルレス口座といった、最も差し替えの利く結節点である。

3つ目は、イランが取る通航料に米国が逆向きの値段をぶつけたことだ。新たに示された指針は、ホルムズ海峡でイラン側の通航料徴収主体と関わること自体を制裁リスクへ変えた。海峡に生まれた許可制の経済に、ドル建ての値札を貼りつけたに等しい。3つとも、これまで報じられてきた以上に丁寧に読み解く価値がある。

ベッセント財務長官はノルマンディー上陸作戦になぞらえ、対イラン制裁は既存権限を組み替えただけ

作戦の法的な中身は、掲げられた看板よりもずっと平凡である。財務省外国資産管理室(OFAC)は、個人送金、学術交流、国際会議への参加、スポーツ交流を制裁の例外としてまとめて認めてきた一般許可5件について、適用を停止した。すでに始まっている取引を整理するための猶予は、9月8日で打ち切られる。あわせて企業、個人、船舶を合計60近く制裁指定し、デジタル資産、テクノロジー、金、航空、海運の5分野を、二次制裁を適用できるイラン経済の領域に加えた。

米法律事務所デービス・ポーク・アンド・ウォードウェルは顧客向けの解説で、この一連の措置を上陸作戦の開始ではなく砲撃の継続にたとえ、既存の権限を組み替えて作られたものだと整理している。イランの核問題で米側の交渉団に加わっていた元外交官アラン・エアはNPRに対し、米国はすでに「低い枝の果実も、中ほどの枝の果実も、高い枝の果実も、木そのものも」標的にしてきたと語った。

米国がさらに包囲するイラン経済、原油輸出は止まり物価上昇率は90%

世界の終わりのように語る見方も、もう打つ手は残っていないと突き放す見方も、同じ誤った物差しを当てている。米国がイランに対してこれ以上何をなしうるかという物差しだ。テヘラン自身の説明に従うなら、米国が断ち切れる経済的な生命線はもうわずかしかない。イラン中央銀行は原油輸出が止まったと述べている。政府の公式統計で物価上昇率は90%近くに達し、通貨リアルは対ドルで200万リアルを突破した。国際通貨基金(IMF)は今年の景気後退の幅を約5〜6%と見積もっている。トルコのアナドル通信による解説と、IMFが戦時下で示した改定値が、この数字の出どころである。ここまで切り離された経済をさらに包囲する行為は、イランではない別のどこかに狙いを定めている。

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