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AI

2026.09.03 13:00

AIを駆使して「お寺のDX」を推進する次世代僧侶の挑戦

長野県・浄土宗善立寺

お寺に溢れる「紙」の問題はこれだけではない。宗派や地域寺院からの会議資料、さらには歴史的な書物まで、お寺は膨大な紙資料を抱えている。小路氏は、江戸時代末期から続く大切な「過去帳」(亡くなった人の戒名や没年月日が記された帳簿)もScanSnapでPDF化している。これは、火災や水害などの災害時に備えたバックアップとしての意味合いが強い。

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毎月大量に届くDMや資料
毎月大量に届くDMや資料

「過去帳にはお寺の歴史が残っており、火事になったら本尊と一緒に持って逃げろと言われるほど大事なものです。ボロボロになったものを修復するには何百万円もかかってしまうため、デジタルとして保存しています」

さらに、90年の歴史を持ち、全1,000号に及ぶ雑誌『浄土』のアーカイブ化にも取り組んだ。非破壊スキャナー『ScanSnap SV600』などを用いてすべてのページをPDF化し、仏教史などを研究する人々に向けた貴重な資料として公開している。「環境を選ばず、長く続くものを保存していく上で、PDFというフォーマットは非常にありがたいですね」と小路氏は語る。

無料公開している『浄土』(1935年昭和10年5月創刊号)
無料公開している『浄土』(1935年昭和10年5月創刊号)

寺報の制作時間が4分の1以下に

バックオフィスのデジタル化を進める一方で、小路氏は「広報活動」や「ナレッジマネジメント」といったより高度な領域にもAIを組み込んでいる。

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SNSの台頭などにより、近年はお寺自らが情報を発信し、ファンやコミュニティを作っていくことが求められている。小路氏は2014年頃から独学でデザインやレイアウトを学び、「Adobe InDesign」などのプロ向けソフトを使って自ら寺報(会報誌)を制作してきた。

そして現在、この寺報づくりのプロセスに生成AIが深く関わっている。記事の文章作成には、日本語の表現が自然な「Claude(クロード)」をメインに使用。さらに、過去15年分の寺報のPDFデータや自身が執筆したテキストデータをAIに読み込ませ、「過去のデータとの対話」を通じて新たな企画を練っているのだ。

「Adobe InDesign」などを使って制作している寺報『香蓮』(2026冬号)
「Adobe InDesign」などを使って制作している善立寺の寺報『香蓮』(2026冬号)

「何年も続けていると同じ内容を書いてしまったり、1人でやっているとマンネリ化してしまったりします。そこで、AIに『こういう切り口はどうですか』と相談したりしています。また、事実確認や文字校正もAIにお願いすることで、以前は2週間かかっていた企画から紙面割りの作業が、今では3日ほどでできるようになりました。過去のテキストデータを引っ張ってきて『この部分が使えるんじゃないですか』と提案してくれるので、本当に楽になりました」

AIの活用は広報だけにとどまらない。専門知識が必要とされる「法務」の領域でも、AIは一人社長の強力なアシスタントとなっている。

小路氏は現在、大学での業務や企業とのシステム開発案件などで業務委託契約を結ぶ機会が多い。その際、「Acrobat AIアシスタント」を活用し、契約書PDFのスクリーニングを行っている。「契約書にただサインするのではなく、自分にとって不利な条項が含まれていないかをAIに一次チェックしてもらっています。お寺の業務ではあまり契約書を交わす文化はないのですが、他の仕事においては非常に重宝しています」

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文=布施加奈子

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