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AI

2026.09.03 13:00

AIを駆使して「お寺のDX」を推進する次世代僧侶の挑戦

長野県・浄土宗善立寺

さらに、お寺の運営を難しくしているのが「スケジュールが立てられない」という特性だ。当たり前だが葬儀の予定は事前に組むことができず、常に不測の事態に対応できるよう待機していなければならない。「この仕事は3日後以降の予定が立てられないんです。休みが取れず、家族を旅行に連れて行くことも難しい」と小路氏は語る。

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こうした過酷な労働環境は、お寺の後継者不足にも直結している。コロナ禍以降、大学で僧侶になるためのカリキュラムを志望する人数は年々減っており、僧侶を目指す人は減少傾向にある。さらに深刻なのは、お寺の収入面の問題だ。

「統計によれば、大体半分のお寺がお寺の運営だけでは食べていけません。平日はサラリーマンや学校の先生などの副業をして、土日にお坊さんをやるというケースが非常に多い。今のまま雑務が多い状態では、兼業で続けていくことすら難しいのが現状です」

後継者が減っていく中で、現在ではひとりの僧侶が2つから3つのお寺を掛け持ちで管理するケースも増えているという。そうなれば、事務作業ばかりに忙殺され、「一体何のためにやっているのか」という根本的な意義を見失いかねない。この状況を打破するため、小路氏はエンジニア時代に培った視点をもとに、お寺のDXへと乗り出した。

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膨大な紙の資料をスキャナーとAIでリスト化

小路氏が最初に取り組んだのは、アナログな情報のデジタル化だった。その代表例が「墓地管理のデジタル化」である。

善立寺の境内には約300基ものお墓がある。かつてはこれをA0サイズの巨大な紙に印刷した地図のようなものを作り、「何々家」と書き込んで管理していた。しかし、この方法では来訪者から「⚪︎⚪︎さんのお墓はどこですか」と聞かれた際、探すのに10分以上かかってしまっていた。

善立寺の境内のお墓
善立寺の境内のお墓

「探すのに時間がかかって、玄関先で待たされたら誰もいい気分はしないじゃないですか。ただお墓の場所を聞いただけなのに。そこで、それをExcelにまとめデジタル化しました。もともと檀家さんの名簿自体は住所録ソフトでデジタル化してあったので、そこに『Aの005』といったお墓の番号を振り、すぐに検索できるようにしたんです」

この変化は単なる業務の効率化にとどまらなかった。「⚪︎⚪︎さんのお墓はどこですか、と聞かれたら、検索して『Aの005番ですね』とすぐに案内できるようになった。すると私たちの業務時間が半分になっただけでなく、玄関先で待たせることがなくなり、その分コミュニケーションが取れるようになったんです。企業で言うとCS(顧客満足度)やエクスペリエンスの向上に繋がる部分に時間を使えるようになった」と小路氏はその成果を強調する。

さらに、毎年の恒例業務である「棚経(お盆のお参り)」の出欠確認も劇的に効率化された。毎年お盆の時期になると、檀家から約300枚もの依頼ハガキが届き、以前はそれを1枚ずつ確認して手作業でリスト化していた。

現在小路氏は、このハガキの処理にスキャナーとAIを活用している。「ScanSnapのスキャナーで一気にハガキを読み込ませ、AIエージェントの『Manus(マナス)』を使って『出席』か『欠席』か、どちらに丸がついているかを全部読み取ってもらいます。さらにExcel(スプレッドシート)に名前などもすべてOCR(光学文字認識)で読み取ってもらい、『誰がいつ行くか』といったデータを一瞬でリスト化して出してもらえるようになりました。なお、個人情報や機密情報については、各サービスのデータの取扱条件を確認し、適切に管理・運用しています」

小路氏が使用しているScanSnapのiX2500
小路氏が使用しているScanSnapのiX2500
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文=布施加奈子

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