北京の対抗策は、予想とは違う
現在の局面についてよくある読み方はこうだ。ワシントンが抜け穴をふさぎ、中国のAI産業は行き詰まり、両者の差がふたたび開く。だが、実際の証拠が指し示しているのは、もっと込み入った先である。
アクセスを締め上げられた中国の対応は、半導体をさらに追い求めることではなかった。勝負の土俵そのものを変えることだった。商務省の規則が漏れた翌日の8月29日、テンセントはHy4-previewをオープンウェイトとして公開した。7700億パラメータのMoE(mixture-of-experts、専門家混合。モデル内部を多数の専門家サブモデルに分け、入力ごとに一部だけを動かす設計)モデルで、一度に扱える文脈の長さは100万トークンに達する。世界中の誰もが無料でダウンロードできる。一方、中国商務省は、AIモデルの重み(weights。訓練の結果としてモデル内部に蓄えられたパラメータ)、訓練データ、半導体の設計を中国自身の輸出管理リストに加えることについて、アリババ、バイトダンス、Zhipu AI(智譜AI)などの国内企業と協議を進めている。ワシントンが築いたのと同じ法的な仕組みを、鏡に映したように武器として使う動きである。
この二つの動きは、あわせて読むべきだ。計算資源へのアクセスが乏しくなり、いつ断たれるか分からないものになるなら、合理的な戦略はこうなる。手元にあるものだけで訓練できるくらいモデルを効率的にする。それでも世界に採用されるくらい開かれたものにする。そして、世界が黙って持ち去ることはできないくらい法的な縛りをかけておく。中国のAI大手は、この三つをすべて実行している。
来月の米中首脳会談では、AIが議題の中心に座ると見られている。クラウドアクセス規則は、その場で規制強化として打ち出されることになるだろう。だが、実際に果たす役割は別のものかもしれない。AIの時代において、技術をめぐる力はもはやハードウェアを所有する者の手にはない、とワシントンが公式に認めた瞬間として記憶される可能性がある。力を握るのは、アクセスとアーキテクチャを押さえる者である。そして、ほかの国々がその仕組みにつながるときの条件を決める者の重みが、いよいよ増している。
半導体戦争の第一幕は、国境と船積み書類の上で戦われた。次の幕は、データセンターの契約、コンプライアンスAPI、そしてモデルのライセンスの上で戦われる。ワシントンは現在、ようやくその戦場に到着したところだ。この二週間の動きから判断するかぎり、北京はとうにそこにいる。


