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北米

2026.09.02 07:00

米国が深海底鉱物を「勝手開発」する動き サプライチェーン脱中国の一環、国際法無視

ザ・メタルズ・カンパニーが深海底からサンプル採取した鉱物団塊。2021年6月8日撮影(Carolyn Cole / Los Angeles Times via Getty Images)

誰も答えを出せていない問題がひとつある。この計画が成功した場合、誰が利益を受け取るのかという問題だ。TMCが当初取得した権益に関しては、ISAの制度のもとでナウル側と利益を共有することが義務づけられていた。米国の許可制度では、こうした利益分配の義務はない。深海の保護に取り組む国際団体、深海保全連合(DSCC)のフィル・マケイブも、米国ルートでは「スポンサー国である太平洋島嶼国側に利益を還元する仕組みもなければ、その必要性もありません」と指摘している。

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背景にある緊急性には名前がある。「中国」だ。電池向けのニッケル需要は2024年末時点で2030年までに約3倍になると予測されていた。コバルトは、採掘国がどこであれ、精製の大部分を中国が握っている(編集注:国連海洋法条約の締約国である中国は、加盟するISAの枠組みを利用して深海底資源の探査を進めてきた経緯もある)。

繰り返せば、ここで問題になっているのは電池用の金属だ。ニッケルやコバルト、あるいはマンガンは、太陽光パネルや風力タービンの主要材料ではなく、電気自動車(EV)の車載バッテリーや電力網用の蓄電池に使われる。言い換えれば、これは再生可能エネルギーの設備ではなく、電池のサプライチェーン(供給網)をめぐる話なのだ。このサプライチェーンを中国抜きで構築しようとしている政権にとって、海底に眠る16億トンもの鉱物資源は、環境面のリスクを伴う賭けというよりも、戦略的な活路に映っているのだろう。

もとより、誰もが賛同しているわけではない。中国外務省の郭嘉昆報道官は、自国水域外の深海採掘に道を開く米大統領令について「国際法に違反し、国際社会全体の利益を損なう」ものだと批判した。フランスのオリビエ・ポワブル・ダルボール海洋担当特使は、さらに厳しくこう述べている。「海洋は、ほかのすべての国や多国間プロセスを犠牲にして、一国の指導的立場を打ち立てるために存在するものではありません」

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TMCによる当初の権益構築でスポンサー国だったナウルは、米国ルートに抗うのではなく、それに乗じる側に回った。ISAの枠組み外でTMCと2025年に結んだ契約により、ナウルは、NOAAルートへの移行を支持する見返りとして、当初2億6500万ドル(約423億円)、最終的に最大5億1500万ドル(約823億円)の受け取りを確保した。

買い手は誰になるのか

ただ、ここには深海底採掘の推進派ですら認めている落とし穴がある。米国から許可を得ても、それは買い手を保証するものではない。それどころか、これまでにドイツのBMWやフォルクスワーゲン、米グーグル、韓国のサムスンSDIを含む77の企業・団体が、国際的に認められたルールが整備されるまで、深海底から採取された電池用金属を調達しないと表明している。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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