2026年6月、ニューヨーク・ニックスが53年ぶりのNBA制覇を果たした。その翌日に開かれた優勝パレードには、NYPDの推計としてABC/Good Morning Americaおよびニューヨーク・ポストが報じたところによれば、推定200万人を超える人々がロウアー・マンハッタンに集まった。
シティホール式典の一般入場券はわずか600枚で、CBS New Yorkの報道によれば、その抽選に応募した人数は34万7000人に上った。式典会場内の公式人数としてはこの数字が基準となるが、シティホール周辺の広場や沿道の群衆を含めれば、マムダニのスピーチをその場で直接聞いた人々の数は、それをはるかに超えていたはずだ。
その場に立ったズハイル・マムダニ市長は、群衆に向かって言葉を放った。スーツの下、シャツとネクタイの上に、ジョシュ・ハートのニックス・ジャージを重ねて。政治家としてのフォーマルな佇まいと、純粋なファンとしての感情的な身体性が、一人の人間の上で重なり合っていた。
筆者がこのスピーチを繰り返し見ながら考えていたのは、「エグゼクティブ・プレゼンス」というものの定義についてだ。ビジネス文脈では長らく、エグゼクティブ・プレゼンスは「威厳」「落ち着き」「権威の可視化」として語られてきた。しかしマムダニのあのスピーチは、その定義を根本から揺さぶっている。
Mayor Mamdani Hosts & Delivers Remarks at the 2026 NBA Champions New York Knicks City Hall Ceremony
ニューヨークが、動いた日
実は筆者はその日の遅い夕方、アップタウンのスーパーマーケットで呑気に買い物をしていた。仕事終わりの混雑時間帯なのに、レジの担当者がいつもと比べてめっきり少ない。当然、長い列ができ、なかなか前に進まない。「変なの」と思いながら友人にその話をしたところ、間髪入れずに返ってきた。「みんなニックスのパレードに行って、仕事も休みを取ってるんだよ」と。
同じその朝、友人は出勤するためにダウンタウンへ向かおうと地下鉄に乗っていた。各駅で止まるホームからオレンジと青のニックスカラーをまとった人々がどんどん乗り込んでくる。駅を重ねるごとに車内は膨れ上がり、ダイヤは乱れ、友人は危うく遅刻しそうになったそうだ。パレードのルート近辺の駅は、通常なら停車する駅も通過していたという。
200万人という数字は、データとして見れば大きい。しかし筆者にとってそれは、スーパーの長いレジ待ち列の体験と友人の地下鉄の話として、もっと肌感覚のある現実として届いた。
そして正直に告白しておかなければならないことがある。筆者は中学・高校の6年間をバスケットボールに捧げた。激弱チームだった。それでも、あの6年間で得たものはとても大きい。だからこそ、長年「弱いチーム」と言われ続けてきたニックスに、気づけば感情移入していた。
この記事を書くにあたり、式典におけるマムダニ市長のスピーチ映像を何度も見返し聞き返し、バスケットボールを続けていた自分、弱いチームの一員だった自分、そして今ここでニューヨーカーとして生きている自分という3つの現実が重なり、気づけば目から熱いものを流しながらキーボードを叩いていたことも、ここに記しておく。



