AI

2026.09.01 08:43

AIを活かして人間関係を深める職場づくり

Adobe Stock

Adobe Stock

筆者の会社は、バーチャル技術とAI技術を活用して自閉症セラピーを提供している。私たちは、AIを子どもたちとの日々の業務にシームレスに組み込む、真の「AIネイティブ」な臨床チームを構築している。

しかし、このセラピーの成否は、臨床スタッフ、子どもたち、そしてその家族との間で交わされる、何千もの密接で極めて個人的な人間関係にかかっている。だからこそ筆者は、チームメンバーが、そもそもこの分野に入るきっかけとなった「意義ある仕事」に対して、つながりを感じ、支えられ、主体的に関わり続けられるようにするにはどうすればよいのか、という問いに何度も立ち戻る。

デジタルヘルス分野の創業者たちと十分に話してきたからこそ、この課題が私たちに固有のものではないとわかる。ほとんどの組織がついていけないほどの速さでAIが進化する現代において、人々はこれまで以上に目的意識、メンターシップ、そしてつながりを渇望している。

この領域で成果を上げている企業は、テクノロジーに投資するのと同じ熱量で、人への投資を学び直している。その精神に基づき、AI時代において人間関係を基盤とする職場を育て、支えるために、私たちのチームが苦労の末に学んだ4つの教訓を紹介する。

1. 人間関係ではなく、摩擦をなくすためにAIを使う

自閉症セラピーの分野では、高度な訓練を受けた臨床スタッフが深刻に不足している。そのため、多くの家族が従来の対面ケアを受けるまでに1年以上も待たされているのが現状だ。一方で、セラピストたちは燃え尽き症候群に陥っている。受け入れ人数を増やそうと無理を重ねるなかで、書類作成や治療計画の立案、経験の浅いスタッフの指導に追われ、本来の仕事に費やす時間が削られているからだ。

私たちは昨年、こうした問題の一部を解決するため、チームに新しいAIツールの導入を開始した。目的はセラピストを代替することではなく、子どもたちと向き合い指導するという「人間ならでは」の業務に、より多くの時間とエネルギーを割けるようにすることだ。私たちは、AIが支援したすべてのアウトプットに必ず臨床スタッフが目を通すプロセスを徹底している。AIが責任を持って実行できる範囲には今なお限界があり、人間の判断が不可欠だからだ。

最大の驚きは、AIが自分たちの時間を取り戻してくれると気づいたスタッフたちが、いかに早くそれを受け入れたかということだった。約1年が経過した現在、臨床スタッフはこれらの新しいツールを使うことで週に3〜6時間を節約できていると報告している。その時間は、1対1の人間的な関わりへと振り向けられている。

当社のバーチャルセラピーモデルと相まって、AIは受け入れ能力の制限という業界のトレンドを覆す原動力となっている。臨床スタッフは、5歳児のセッションから、言葉を話さないティーンエージャー、さらには面接対策を行う若者へと移行する際にも、個別の教材を数時間ではなく数秒で作成できるようになった。今年だけでも、チーム内の「認定行動分析士(BCBA)」の数を2倍に増やすことを見込んでいる。これは、家族との人間関係を構築するためにより多くの時間を割ける点や、柔軟な働き方に魅力を感じるスタッフが多いことも一因だ。

ここには、人間関係を重視する他のすべての職業にとっても、広く応用できる教訓がある。テクノロジーは、人間のつながりを希薄にするのではなく、むしろそれを深めるための「余白」を生み出せるということだ。

もちろん、このテクノロジーを責任ある形で拡大していくには、一部の企業パートナーや家族がAIのデータガバナンスに関して厳しい規制要件に直面していることを認識する必要がある。特定のパートナーや家族に対してAI機能を無効化できることは、コンプライアンスがケアの妨げにならないようにするうえで重要である。

2. 学習を活用してAI導入を進める

初期の段階では、バーチャルセラピーやAIを活用したワークフローに対して、懐疑的な見方をするスタッフもいた。テクノロジーが嫌いだったわけではない。それが新たな負担になったり、家族とのつながりを損ねたりするのではないかと心配したからだ。

テクノロジーへの移行期に、人々がどれほど心理的に不安定になるかを見誤ることは多い。信頼と専門知識の上に成り立つ職業においてはなおさらであり、伝統的にテクノロジーの導入が遅れていた分野であればなおのことだ。単に新しいツールを導入するだけでは不十分であることは、すぐに分かった。スタッフに必要だったのは、サポート、反復、並びに自信を育むことだったのだ。

この取り組みにおいて、最も効果的だった施策のいくつかは、驚くほどローテクなものだった。小グループによるメンターシップ制度、ピアラーニング(互いに学び合う)セッション、いつでも質問できる相談窓口、そして臨床スタッフが安全にテクノロジーを試せる専用のスペースなどだ。

この移行を最もうまく乗り切っている組織は、学習を従業員の副次的なプロジェクトではなく、リーダーシップの責任として扱う傾向がある。

3. 現場で働く人々を守る

多くの企業が、AIを導入すれば人員不足で悲鳴を上げている従業員を補填できると考えがちだ。しかし、結論から言えば、それは不可能だ。ただでさえ手いっぱいのチームに新しいテクノロジーを導入することは、負担をさらに重くするだけにすぎない。

ヘルスケア分野における燃え尽き症候群は、現実的でない症例数、複雑な管理業務、そして「仕事を十分に行うための時間が足りない」という焦燥感から引き起こされることが大半だ。AIはそうしたプレッシャーを軽減することはできても、それ単体で根本解決することはできない。

臨床スタッフの定着率向上に最も寄与した要因のいくつかは、派手なテクノロジーとはほとんど無関係の決定だった。バーチャルケアの導入は、通勤時間の短縮や柔軟なスケジュールといった実質的なメリットをもたらした。受け持つ症例数を適切な規模に維持し、業務負荷に対する期待値を明確にし、意図的に境界線を引くことで、スタッフが子どもやその家族との仕事に集中できる「余白」が生まれたのだ。

4. テクノロジーと同じように、コミュニティにも投資する

組織の分散化が進み、AIが日常業務に深く組み込まれるようになると、組織のカルチャーは自然と育まれるものだと考えてしまいがちだ。しかし、実際は全く逆であることが分かっている。

職場がデジタル化すればするほど、リーダーは人々がつながり、互いに学び合い、自分よりも大きな存在の一部であると感じられるような機会を、意図的に創出していかなければならない。

この教訓は、最近行ったAI導入の際、あるセラピストから届いたメールによって再認識させられた。そこには「チームの他のメンバーから学ぶのが楽しいので、オンラインのカジュアルな勉強会(ブラウンバッグ・ランチ)はぜひ継続してください」と書かれていた。

このメッセージが胸に響いたのは、その要望がテクノロジーとは無関係であり、まさに「人間同士のつながり」を求めるものだったからだ。最も重要だったのは、導入するツールそのものではなく、同僚と共に経験を共有し、質問し、学び合える場が存在することだった。

おわりに

働き方が進化しても、人々の「帰属意識」に対する欲求が消えることはない。むしろ、その重要性は高まるばかりだ。使命感、メンターシップ、そしてコミュニティこそが、個人が変化を乗り越え、仕事に熱意を持ち続け、成長し続けるための原動力となる。そうした「人への投資」は、新しいAI機能の発表ほど派手にニュースで取り上げられることはないかもしれないが、その技術が成功するかどうかを左右する決定的な要素なのだ。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事