広告に踏み込んだOpenAI、広告を拒む競合のAnthropic
デジタル広告は長らく、巨大テック企業にとって現金を生み出す装置だった。GoogleとMetaはそれぞれ、年間で数千億ドル(数十兆円)を集めている。
このデジタル広告市場にOpenAIが乗り込むことは、GoogleとMetaが握る寡占構造への正面切った挑戦であり、AIをどう稼がせるかという立場の表明でもある。最大の競合であるAnthropicは、広告を受け入れるというOpenAIの姿勢をすかさず攻撃材料にした。OpenAIが広告に踏み出したこと自体を題材に、初めてのスーパーボウル広告キャンペーンを組み立てたのである。広告を一切載せない自社のAIアシスタント「Claude」を、OpenAIが選んだ方向の対極に置いた。
広告主には新しい売り場、利用者には無料と引き換えの広告
広告を取り込んだOpenAIと、広告を拒んだAnthropic。どちらの判断が正しかったのかは、市場でまだ答えが出ていない。広告主から見れば、週に10億人が使うAIアシスタントは、商品やサービスと出会わせるための新しい売り場だ。SNSのタイムラインよりも購入の意思に近く、検索窓よりも会話に近い場所に立っている。利用者から見れば、数十年前から続く取り引きの再来である。無料で使える代わりに、自分の注意を広告へ差し出す。OpenAIとAnthropic、それぞれが下した選択が時間の経過にどう耐えるかは、この先数年で最も面白い物語の1つになるだろう。
広告収入は今年4000億円が目標、現在の速度では届かない
OpenAIは今年の広告収入に25億ドル(約4000億円)という目標を置いている。広告に限らず、全社の売上高も年換算で400億ドル(約6兆4000億円)を超える水準へ向かっている。400億ドルは、2025年末に記録した水準のおよそ2倍にあたる。
広告の目標が求めているのは、現在の勢いを保つことではなく、さらに加速させることだ。8月末の時点で年換算10億ドルということは、2026年の残る数カ月で今の速度を2倍以上へ引き上げなければ、通年の目標額には届かない。世界規模でセルフサーブを開放したのは、まさにこの倍増を狙った措置である。
広告主は600社から数万社へ、継続出稿につながるか
試験運用が始まって数週間の時点では約600社だった広告主は、現在は数万社の規模に達している。数万社へ増えた広告主が、すでに市場へ深く根を張ったGoogleやMetaを相手に、継続して予算を投じる存在に変わるのかどうか。年換算の数字そのものには、この問いに答える力がない。
8月31日の発表がはっきりさせたのは、ChatGPT Adsがもはや実験ではないという点だ。OpenAIが投資家に示す収益項目であり、大陸をまたいで広げている事業であり、専用の道具立てを整えている対象である。開始から200日で、OpenAIは、Googleが何年もかけ、Facebookが10年近くを費やして組み上げたものを手にした。10億人が集まる広告の売り場、誰でも自分で出稿できる仕組み、そして年換算10億ドル(約1600億円)という速度である。


