エヌビディアはAI向け半導体で圧倒的な地位を占め、高い利益率を確保してきた。米国市場が長く気にしてきたのは、この高い利益率をいつまで守れるかという点である。エヌビディアが今回選んだ相手は、台湾のMediaTek(メディアテック、TWSE:2454)である。自社工場を持たず設計に特化した半導体会社で、手元の機器からデータセンターまでAI向け製品を手がける。
エヌビディアが転換社債をほぼ全額引き受け、メディアテックはNVLink Fusionを採用
エヌビディアは米国時間8月31日、メディアテックが発行する転換社債に35億ドル(約5600億円)を投じると明らかにした。転換社債は、一定の条件で株式へ転換できる社債を指す。メディアテック製チップは、世界で売られる携帯電話やテレビ、Wi-Fi機器に幅広く載っている。エヌビディアが引き受ける35億ドルは、メディアテックによる転換社債の発行総額39億ドル(約6240億円)に対し、ほぼ全額を占める。メディアテックが市場に出した転換社債として、過去最大の規模になる。
資金の拠出と合わせて、メディアテックはNVLink Fusionを採用する。エヌビディア製システムでは、GPU同士をNVLinkという高速インターコネクトで結び、大規模なAIモデルを動かしている。NVLink Fusionは、他社が独自に設計したAIアクセラレーターを、NVLinkで結ばれた仕組みへ組み込めるようにするプラットフォームである。AIアクセラレーターは、AI処理を専門に担う半導体を指す。設計から実際に稼働させるまでの手順は、エヌビディア側があらかじめ検証を済ませている。完成したチップは、ラック単位でまとめて動くエヌビディア製システムへそのまま差し込める。提携範囲は、個人向けAIコンピューターのDGX Sparkと、メディアテックが手がける車載製品にも及ぶ。
顧客が自前でAIチップを作る流れに、エヌビディアが「料金所」を築く
今回の案件は、メディアテックに資金を出すことが目的ではない。各社が独自に設計するカスタムAIチップは、NVLinkに代表される接続基盤がなければ動かない。エヌビディアが押さえにいったのは、接続基盤そのものである。顧客が自前でAIチップを設計する動きは、エヌビディアを脅かすはずだった。取引条件をまとめて読むと、エヌビディア自身が同じ流れの上に、「通行料を取る料金所」を買ったことになる。



