エヌビディアを脅かすのは競合ではなく、自前チップを作る大口顧客
エヌビディアに対する弱気論のうち、最後まで力を保ってきた論点は、AMDとの競争ではない。カスタムチップである。エヌビディア最大の顧客層が、高い利益率を払い続けることに嫌気を差し、自社でアクセラレーターを設計して離れていくという筋書きだ。自前で巨大なデータセンターを運営するハイパースケーラーは、現在はいずれも自社チップの開発計画を走らせている。市場は、新しい内製チップが発表されるたびに、エヌビディアが築いたエコシステムから顧客が少しずつ離れる動きと受け止めている。
エヌビディアが半導体設計会社に巨額出資、需要の自作自演を疑う声
8月31日の発表を受けた論評は、2つ目の懸念を持ち込んだ。AI関連企業が互いに資金を出し合う状態は続いている。半導体大手が別の設計会社へ数十億ドル(数千億円)を渡す動きも、需要を自ら作り出しているように見えるという指摘である。懐疑的な見方は、放っておいても勝手に形になる。ただ、懐疑論は35億ドルが実際に何を買っているのかを取り逃がしている。
エヌビディアが本当に売るのはGPUではなく、チップ同士をつなぐ土台
独自に設計したAIアクセラレーターは、単体では役に立たない。チップ間を高速で結ぶインターコネクト、ラックをまたいで規模を広げるネットワーク、実運用に耐える検証済みシステム設計がそろって初めて動く。NVLink Fusionは、まさにこの接続と検証をひとまとめにして売る商品である。
ロイターはNVLink Fusionを、独自チップをエヌビディア製ラックスケール基盤へつなぐための道筋だと説明している。使うのは、ハイパースケーラーやクラウド事業者、AIモデルを開発する企業である。業界では、企業が独自に設計するチップをXPUと呼ぶ。メディアテックが重要になる理由は、エヌビディア並みに大きな設計チームを持てない企業に代わり、用途に合わせて一部を作り替えるセミカスタム半導体を設計している点にある。カスタムチップ時代における武器商人の役割だ。
コンピューター業界でインテルが示した前例、標準を握る側が残る
過去に同じ響きを持つ例がある。Intel(インテル)が主導したx86である。インテルが30年にわたりコンピューティング分野で中心に座り続けた理由には、プラットフォーム標準を握っていた点がある。結果として、競合他社が作ったチップでさえ、インテルの標準に合わせて組み込まれ、インテルを中心とする仕組みをかえって強くした。個々の搭載枠を1つずつ勝ち取ることより、標準そのものを握るほうが重かった。
取引が狙いどおりに働けば、エヌビディアが取る高い利益率から逃れようとする試みは、すべてエヌビディアが敷いた配管、つまり接続と通信を担う仕組みの上に建てられることになる。
GPUを自社製XPUに置き換えた顧客も、接続基盤とネットワーク、ラックは引き続き買う。しかも、XPUの設計を請け負うメディアテックは、現在はエヌビディアから資金を一部受け取る立場にある。


