現状に挑む
自社ですでに認識されている問題を特定しようとする場合、「なぜ」と問いかけるこのアプローチは比較的単純なものに見えるかもしれない。解決すべき明確な問題が存在するため、このような状況では「なぜ」と問うことが理にかなっているからだ。
それほど明白ではないものの、さらに大きなイノベーションにつながる可能性があるのは、これと同じアプローチを自分が身を置く業界の現状に対して適用することだ。たとえば、プライベートジェット手配サービスのJet Agency(ジェット・エージェンシー)のマネージングパートナーであるジョーダン・ブラウンは自社記事の中で自社がこの考え方をプライベート航空業界にどのように適用したかを次のように説明している。
「なぜプライベート航空はこれまでと同じやり方で運営されなければならないのか。この問いから全てが始まった。業界が不変のものとして扱ってきた前提を改めて検討することで、会員が当然のものとして受け入れていた不確実性を排除し、透明性のある時間あたりの固定料金を採用した階層別の会員制度を構築することができた。既存のモデルに疑問を投げかける姿勢があったからこそ、創業から5年間で数千件のフライトを運航することができた。そしてその姿勢は現在も会員体験に対する私たちの考え方に影響を及ぼし続けている」
今日、圧倒的な存在感を持つブランドの多くは現状に疑問を投げかけ、イノベーションを起こすことからその歩みを始めた。アマゾンのEコマースへのアプローチは1990年代には斬新なものだったが、今では当たり前のものになっている。ネットフリックスは2度にわたって現状に疑問を投げかけた企業だ。最初は郵便によるDVDレンタルというビジネスモデルの採用、次にストリーミングの導入によってだ。アマゾンは実店舗型の小売業に対抗する強力なモデルを構築した。ネットフリックスは事実上、従来型のビデオレンタルを終わらせた。
標準的な慣行や「最善の習慣」は何もないところから生まれて存在しているわけではない。特に人工知能(AI)が多くの業界の現状を一変させている今、優れたイノベーターは自分たちの業界に存在する隠れたルールや基準を絶えず問い直し、挑戦することでもっと良い方法がないか探し続けている。


