「過去ばかりを語る経営者には会うべきではない。経営者なら、今と未来を語るべきです」
CCHを率いる高鍬仁一氏は、そう語る。
人気フルーツタルト専門店「キルフェボン」や、東証スタンダード上場企業のホリイフードサービスなど、これまで8件のM&Aに携わり、すべての案件を成長につなげてきた。
高鍬氏のM&Aは、単に企業を安く買い、保有する投資ではない。
営業、マーケティング、採用、組織づくり、DX、AI活用まで、自ら事業の現場に入り、買収先の価値を高める。
CCHが目指しているのは、2030年までに売上高1000億円の企業グループをつくることだ。
ただし、高鍬氏にとって1000億円は、規模を誇るための数字ではない。
「CCHを知っていますかと聞いたときに、『知っています』『使っています』『感謝しています』と言ってもらえる会社にしたい」
誰もが知り、誰かの生活や仕事を支えている企業になる。その状態を定量的に表した数字が、売上高1000億円だった。
その目標を実現するための中核戦略が、M&Aである。
CCHのM&A基準は「2年で回収できるか」
一般的なM&Aでは、EBITDAの何倍で企業を買うかという「マルチプル」が議論される。
業界平均が5倍だから5倍。成長市場だから8倍。ブランド力があるから10倍。
しかし、高鍬氏は、市場の相場だけでは判断しない。
CCHには「2倍」という独自の基準がある。
これは、必ずEBITDAの2倍以下で買うという意味ではない。
仮にマルチプルが10倍でも、CCHが経営に入り、2年で10億円を回収できる成長シナリオを描けるのであれば買収する。
反対に、価格が安くても、事業を伸ばす道筋が見えなければ買わない。
高鍬氏が見ているのは、現在の利益に対する倍率ではない。
CCHが持つ営業力、マーケティング力、採用力、組織運営力、テクノロジーを投入したときに、企業価値をどこまで高められるのかという未来の価値だ。
「商売の基本は、安く買って高く売ることです。ただし、今の価格が安いかではなく、本来の価値に対して過小評価されているかを見ています」
重要なのは、価格ではなく、価値と価格の差である。
買収前に「出口」を決める
CCHでは、買収前に必ず出口を決める。
大きく分けると、選択肢は三つある。
将来的なIPOを目指すのか。
一定の成長を実現した後、よりシナジーを持つ企業へ売却するのか。
CCHグループとの相乗効果が大きいため、長期的に保有するのか。
この出口によって、適正な買収価格も、投資すべき経営資源も変わる。
どれだけ有名な会社でも、出口と成長シナリオを描けなければ買わない。
逆に、現在の利益が小さくても、再現性のある事業基盤と強い組織があれば、高い価値を認める。
この判断の象徴となるのが、キルフェボンとホリイフードサービスである。



