キャリア・教育

2026.09.08 13:30

「救命艇状況」の世界

実際、現在の米国の大統領が声高に語る「MAGA :Make America Great Again」などのスローガンは、それがどれほど大衆受けしようとも、その本音は、「他の国のことなど、どうでも良い。自分の国さえ栄えれば、それで良いのだ」という国家エゴの“剥き出し”の表明に他ならない。そして、こうした自国中心主義を大声で語る政治勢力は、米国だけでなく、英仏独を始めとする欧州諸国でも伸長しており、その事実が、この問題の根深い深刻さを教えている。

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米国大統領を筆頭とする世界の政治リーダーが語る、こうした国家エゴと個人エゴの言葉は、人類の叡智が永い年月をかけて育んできた道徳心や倫理観、他者への共感や弱者への配慮といった価値観を根底から破壊し、剥き出しのエゴを閉じ込めてきた「パンドラの箱」を、愚かにも開けてしまった。

では、この「本音剥き出しの社会」「国家エゴと個人エゴが跋扈する世界」は、どこに向かうのか?

「救命艇状況の世界」は、どこに向かうのか?

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実は、それは決して「弱肉強食」の世界ではない。強い者が生き残り、弱い者が死に絶える世界ではない。そのような“生やさしい”世界ではない。

それは、強者も弱者も、勝者も敗者も、先進国も途上国も、全てが破滅に向かう世界に他ならない。

これから人類が向かう状況を、敢えて述べるならば、それは、日本人の誰もが知っている、あの物語、芥川龍之介の語った「蜘蛛の糸」であろう。

「自分達だけが助かりたい」と思い、「自分達だけは助かる」と思って弱者を見捨てる人間が、社会が、最後に「何」を見るのか。日本という国の文化に宿る深い叡智は、そのことを教えている。

弱者に対する「共感」とは、決して「憐憫」でも「同情」でも、「ヒューマニズム」でもない。

その弱者の姿や途上国の人々の姿は、我々自身の未来の姿に他ならない。


田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。元内閣官房参与。全国から1万名を超える経営者が集う田坂塾・塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など、国内・海外で150冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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