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国内

2026.09.07 13:30

仏米の工場を見て考えたこと

シカゴの空港に降り立つと空気が黒灰色に汚れ、きなくさい。カナダの山火事の煙だという。五大湖の風に乗って来たのだろう。これを理由にカナダへの関税を強化すると強弁する大統領には呆れた。

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シカゴ現法は仏現法より少し規模が大きく、半導体や宇宙関連で将来性も高そうだ。工場視察の後は、ここでも長時間の意見交換だった。安全管理、特許戦略、マーケティング等々、多岐にわたる議論のなかで、財務分野に関する応酬は少々意外だった。

私から、加重平均資本コスト(WACC)や投下資本利益率(ROIC)について尋ねると、CFOは「貴方はMBAかな?」とニヤリ。「もちろん試算はしている。だが、当社の規模ではあまり意味がない。トップラインと損益上の利益率のほうが重要だし、資本効率なら自己資本利益率で十分だ」という。WACCもROICも、いくつもの仮定や前提条件を置いている。上場企業なら市場データを参照できるが、当社には当てはまらないことが多過ぎる。もっとリアリティある指標でなければ、と強調する。「日本企業はMBAやコンサルタントの意見を丸のみし過ぎていないかい?」と皮肉も忘れない。

会議を終え、夕食に向かうため出入り口の守衛さんに挨拶すると、様子がおかしい。巨体を揺らせて近寄ってくる。赤ら顔をくちゃくちゃにして、泣きはらしている。聞けばこの日で退職とのことで、30年勤めたこの会社に別れを告げなければならないと涙声だった。

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現法幹部との夕食会では、往古の映画『ウォール街』が話題になった。マイケル・ダグラスが乗っ取り屋を演じた作品だ。副社長が「あの映画から40年たつが僕たちは絶対にWall Street peopleにはなれないし、なりたくもない。マーティン・シーンの役回りがいいよ」。マーティン・シーンは、乗っ取り対象企業のたたき上げの整備工を演じていた。

T社はもちろん、日本の大企業も数多くの中小企業あってこそ成り立っている。それは仏米ともに同じだ。羽田着陸寸前に窓外の中小工場群を見ながら、「世界中小企業サミットが必要だな」と独り言を言っていた。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事、公益財団法人 日本証券経済研究所 研究顧問。1953年、神奈川県生まれ。1977年東京大学法学部卒、大和證券入社。1981年ワシントン大学法律学修士取得。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。

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