Circular Business賞(循環型ビジネスモデル部門)の「Bed and Craft」を富山・井波で営む山川智嗣は、挨拶で創業当時を振り返った。
「10年前は地域の方々から怪訝な顔をされて、あいつは何者なんだと警戒された」
会場にいる多くの受賞者が頷く姿が目に入る。木彫刻の街で宿と職人を結び、宿泊を工芸に触れる体験へ変え、収益を街へ還した。そのBed and Craftは今年、10周年を迎えた。
加えて、クレディセゾン特別賞を山梨・市川三郷の花火会社、丸富が受賞。「和火師」佐々木厳が、硝石と硫黄と木炭だけで焚く江戸期由来の「和火」を客が自らつくる体験に仕立てている。
「山奥だからできることをやる」
そして最高賞「THE ICON」は、冒頭のL'évoに贈られた。谷口が富山市内で営んでいたレストランを利賀村の山中へ移し、オーベルジュとして開き直したのは2020年だった。

移転前には「すぐに潰れるぞ」という言葉まで飛んだが、代理で登壇した澤 千恵によれば、谷口はそうした言葉が右から左へ通り抜けていく耳をもっていた。そして、よくこう口にしていたという。
「みんな山奥だからと反対するけれど、山奥だからできることをやる。いつかきっとレヴォがモデルケースになって、日本のいろんな地域で面白いことをやろうという人が、たくさん増えていく」
その言葉どおり、この夜の会場には、自分の土地でしかできないことを事業に変えた30組が集まっていた。ビデオメッセージで画面に現れた谷口は、生産者や作家に支えられての受賞だと礼を述べた。壇上の澤は、「ハンターや漁師まで含めた“チームレヴォ”のみんなと、この盾を分かち合いたい」と結んだ。
J-CATの飯倉は、挨拶のなかで観光という言葉の語源にも触れていた。中国の古典に由来する「国の光を見る」。光が指すのは景色より先に、その土地の人の暮らしぶりや文化、生き様だという。「土地の空気や職人の技、そこに流れている時間の価値は、AIが進めば進むほど高まっていく」と。
受賞した30組に向けて、アドバイザリーボードの一人、ナラティビスト/価値デザイナーの渡邉賢一はこう言葉を贈った。
「意味の取引の時代が、いよいよ始まったのかなと思っています。ここにいる一人一人が、日本の編集者なんじゃないかと。日本を編集していく人を1000倍に増やしていく時代が、今日スタートするんじゃないでしょうか」


