ホメロスの『オデュッセイア』を映画化した夏のブロックバスター作品のプロモーション活動中、クリストファー・ノーラン監督はAIというテーマに関して世間の痛いところを突いた。ノーラン監督によると、このテクノロジーは「ギリシャ人が中にいることを誰もが知っているトロイの木馬」だという。しかし、今回は「中が透けて見えるガラス製の馬」なのだ。彼のこの指摘は、人々(特に若い世代)がAIに対して抱いている健全な懐疑心を浮き彫りにした。筆者が共同創設者兼CEOを務めるJust Capitalの新たな調査データは、こうした否定的な感情の背景にあるものを明らかにし、全米で繰り広げられているAIをめぐる議論において最も顕著な対立点の一つである、データセンターへの反対意見に新たな視点をもたらしている。
5月、ギャラップの世論調査では、地元でのデータセンター建設に対する反対派は71%に達し、これは過去のどの原子力発電所に対する世論調査よりも悪い結果であったようだ。しかし今月、我々の調査では異なる結果が出た。反対が47%、賛成が39%、未定が13%だった。この「未定」というカテゴリーは注目に値する。なぜなら、この問題に関する大半の世論調査では、まだ決めかねている人や知識が不十分な人向けの選択肢が用意されていないからだ。
興味深いことに、10マイル離れた場所にデータセンターができることについてどう思うかを尋ねたところ、反対49%、賛成37%と、数値はほとんど変わらなかった。これは、単なる一般的な「NIMBY(我が家の裏庭にはお断り)」的なローカル政治以上の何かが作用していることを示唆している。さらに、反対派の51%は「まだ考えを変える可能性がある」と回答している。そして、彼らの心を動かす可能性が最も高い要因は「経済的利益」なのだ。
急速に台頭する競合他社に先んじて演算能力(コンピュート)を構築しようと競い合っている業界にとって、これこそが我々の調査から得られた最も価値のあるインサイトかもしれない。一方では自分たちを完全に信頼していない世論に対処し、もう一方では容赦ないグローバル競合他社に直面している米国のAI企業であっても、その恩恵に人々がどう直接あずかれるかを示すことができれば、依然として人々の支持を獲得することは可能だ。
問題は(やはり)経済なのだ
データセンターの反対派に自らの言葉でその理由を説明してもらうと、状況はさらに複雑であることがわかる。34%が電気代や光熱費の上昇を挙げ、22%が環境への影響を挙げている。民主党員よりもデータセンターを支持する傾向がある共和党員も、コスト上昇については同様に懸念を抱いている。この夏、ウィスコンシン州とミシガン州でのデータセンターをめぐる紛争を10日間にわたって取材したジャスミン・スンも、同様の結論に達している。すなわち、「AIポピュリズム」は、AIそのものよりもポピュリズムと関係があるのかもしれない、ということだ。
この傾向は、人々が企業に今後何を望むかを尋ねた際にも当てはまる。AI開発の完全な中止を望んでいるのはわずか16%だ。43%は開発のペースを落とし、既存のデータセンター容量のみを使用することを望んでおり、24%はフルスピードで開発が継続されることを好意的に捉えている。筆者にとって、これは世論が新しいテクノロジーを頭から拒絶していることを示すものではなく、それが自分たちにとって利益になるとまだ確信できていない証拠のように思える。
共に繁栄するための投資の教訓
企業はどのように対応すべきだろうか。歴史から得られる教訓がある。例えば、2000年代のシェールブームの際、エネルギー企業はトラックの往来や坑口、騒音、環境への影響に対する補償としてだけでなく、公正な経済的参画の機会を提供するために、農家、土地所有者、地域社会に対して借地料やロイヤルティを支払った。また、19世紀の鉄道時代には、企業は地元自治体から線路敷設の許可を得る見返りとして、主要な駅を建設し、学校向けの土地を提供し、町に貨物運賃の割引を適用した。
これらのシナリオ(およびそれに類する事例)は、データセンター開発業者が成功するためのテンプレートではない。それらは論争やスキャンダル、破られた約束に満ちていた。しかし、何が機能し、何が機能しなかったのかを見極め、企業が地域社会と足並みをそろえて対応する現代版のあり方を探るために、研究する価値はある。
そうした事例はすでに現れ始めている。Metaの新しいファンド「Future is for Everyone Fund」は、各コミュニティが策定したプログラムを通じて、教師や救急隊員、地域のエネルギー・水道インフラに資金を提供している。今年初め、Microsoftはデータセンターの建設によって電気料金が上昇しないようにすることなどを含む、コミュニティ優先の「Community-First AI Infrastructure」のコミットメントの概要を説明した。電気料金に直接結びついたコミットメントは、人々が実際に挙げた懸念に対応するものであり、地域の機関やサービスへの投資は、より広範で、おそらくより持続的なものに対処するものだ。
このような取り組みだけで形勢を完全に逆転させ、データセンターの反対派に考えを変えさせることは難しいかもしれないが、出発点にはなる。このテクノロジーが、家計負担の軽減、雇用、医療、教育に関する懸念に対処するのに役立つという、より広範な実証と結びつけば、AIの運命の女神はデータセンター開発業者により良い結果をもたらすかもしれない。



