北米

2026.08.31 08:30

イラン攻撃開始から半年 米国が払うべき莫大な代償

イランの首都テヘラン中心部で、首を絞められるドナルド・トランプ米大統領を描いた反米広告。2026年8月23日撮影(Morteza Nikoubazl/NurPhoto via Getty Images)

イランの首都テヘラン中心部で、首を絞められるドナルド・トランプ米大統領を描いた反米広告。2026年8月23日撮影(Morteza Nikoubazl/NurPhoto via Getty Images)

米国がイランへの攻撃を開始してから半年が経過したが、その代償は短期的にも長期的にも甚大な規模に及んでいる。米軍兵士の犠牲や投入された資源にとどまらず、その他の戦略的コストも膨らみ続けており、米国はいずれこの代償を支払うことになるだろう。

増大し続ける米国の国防費

この紛争の財政的負担についてはさまざまな試算があるが、いずれも莫大な支出を示している。ピート・ヘグセス米国防長官は、日常的な作戦や数千人規模の米軍部隊の前線展開、数千発の通常兵器や精密誘導兵器の使用を含め、イランとの紛争で、米国はこれまでに約380億ドル(約6兆円)を費やしたことを公式に認めた。

だが、この試算には中東にある米軍施設や外交施設への被害は含まれていない。報道によると、同地域にある約20の米軍施設に加え、格納庫や滑走路に配備されていた貴重な軍事装備が、イランのミサイル攻撃や無人機(ドローン)攻撃によって深刻な被害を受けた。攻撃開始以降、イラク、サウジアラビア、クウェートなどにある米国の外交施設に対する攻撃も複数回発生している。数十機の戦闘機を含む損傷した軍事装備の交換や、被災した施設の修復や人員の移転にかかる費用は数十億ドルに上る見通しだ。

こうした費用を賄うため、ドナルド・トランプ米政権は900億ドル(約14兆円)近くの補正予算を求めており、うち約670億ドル(約11兆円)はイランへの攻撃に充てられる予定だ。これは、トランプ政権が2027年度に要求した過去最高額の1兆5000億ドル(約240兆円)の国防予算とは別枠であることを念頭に置いておく必要がある。

世界に広がる経済的打撃

安全保障費用の増加は、この紛争がもたらす財政的影響のほんの一部に過ぎない。例えば、ホルムズ海峡を通る石油の輸送が制限されたことで、米国のガソリンとディーゼル燃料の価格は、2月末の攻撃開始前と比べて約30%上昇している。これにより、同国では攻撃開始以来、各世帯が500ドル(約8万円)の追加負担を強いられている。

米イラン間の覚書で結ばれた合意が破られ、ホルムズ海峡の支配権確保に向けてイランが継続的に攻勢をかけていることから、多くの専門家は、同海峡を通過する商船の航行量が少なくとも今年末まで、あるいはそれ以降も攻撃前の水準に戻る可能性は低く、原油価格は高止まりすると予測している。

原油価格の高騰で米国のインフレは加速しており、今年の労働者の賃金上昇分の大半が相殺されるものとみられる。この紛争は予想を上回る米国の金利上昇を招き、借入コストを押し上げている。

米経済は大きな打撃を受けているが、世界経済への影響はさらに深刻だ。世界銀行は、今年の世界の経済成長率が前年比2.9%から2.5%に低下すると予測しており、エネルギー危機が国際金融市場に衝撃を与えれば、経済成長率はわずか1.3%にとどまる可能性もあるとしている。

同銀行はイラン紛争の影響を鑑み、世界約3分の2の国の経済成長予測を下方修正した。特に中東諸国はエネルギー収入の減少により、大きな打撃を受けるとみられている。さらに、ホルムズ海峡の混乱による肥料不足は、世界各地で農作物の収穫量の減少や食料供給の逼迫(ひっぱく)、食料価格の高騰を引き起こしている。

次ページ > 影響力を拡大するイラン

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事