隠された世界
静岡県沼津市の駿河湾に突き出た細長い岬、大瀬崎(おせざき)で、1尾のテンガイハタ(フリソデウオ科の1種)が深海から垂直に浮上してきた。銀色の長い体と繊細なヒレは、外洋での生活によく適応している。
この写真は、冬のブラックウォーターダイビング(外洋での夜間ダイビング)のさなかに撮影された。テンガイハタの周囲には、サルパ(クラゲに似た小さな動物で、海中の微小な有機物粒子を食べる)が群れ、深海をさまよう生き物たちの姿を垣間見せている。
インドネシアのレンベ島沖で、サンゴのポリプの合間からチンヨウジウオが顔をのぞかせている。この魚の顔立ちは独特で、興味津々、あるいは驚いている表情を連想させる。こうした表情のおかげで、サンゴ礁からほとんど出ることのないこの魚に、見る人は親近感を抱く。
ガイドのなかには、この小さな魚がツアー客によく見えるよう、サンゴのコロニーを壊してしまう者もいる。しかしこの写真では、撮影者は辛抱強く待ち、魚が自分から姿を現した瞬間を捉えている。
オスのアマノガワテンジクダイは、孵化したばかりの稚魚をみずからの口内に隠し、3週間にわたる抱卵期のあとも、親として世話を続ける。孵化のあと、オスは時に10日間にわたって絶食したまま稚魚を保育し、稚魚が自活できるようになるまで捕食者から守る。
この写真では、2匹の稚魚が父親の口から顔をのぞかせている。口内保育という特殊な戦略が、この種において幼い個体の生存に貢献していることがよくわかる。


