ホルムズ海峡が運ぶのは石油だけではない、命を育む海だ

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世界の指導者たちがホルムズ海峡について議論するとき、通常はバレルやタンカー、航路といった言葉が使われる。この狭い水路はペルシャ湾とオマーン湾を結んでおり、世界の石油の大部分がここを通過する。そのため、この地域での紛争はエネルギー市場に即座に動揺を与える。

しかし、この海峡が運んでいるもので、はるかに注目されていないものがある。それは「命」だ。

その海流は、サンゴ礁、マングローブ林、藻場、そしてインド洋の深海を結びつけている。クジラ、イルカ、ジュゴン、ウミガメ、ジンベエザメ、そして商業的に重要な魚類がこの海域に依存している。堆積物の中に生息する微小な生物さえも、より大きな海洋システムを維持するのに役立っている。

現在、戦争と航路の長期にわたる混乱は、ペルシャ湾をはるかに超えて広がる可能性のある形で、この生態系を脅かしている。

圧力を受ける生命の回廊

ペルシャ湾は、海洋生物にとってすでに過酷な環境である。浅く、非常に水温が高く、塩分濃度も高い。ここに生息する種は、多くの海洋生物が耐えられる限界に近い条件に適応してきた。その適応力があるからこそ、この海域は海洋生物が気候変動にどう対応するかを研究する科学者にとって貴重な存在となっている。

同じ特徴が、この湾を脆弱にもしている。半閉鎖的な海域であり、ホルムズ海峡を通じて外洋と海水を交換しているため、汚染や生態系の混乱が急速に拡散せず、長期間にわたって残留する可能性がある。

この地域にはマングローブや藻場があり、餌場、隠れ家、繁殖地を提供している。また、ニタリクジラ、ジンベエザメ、絶滅寸前(CR)のアラビア海ザトウクジラの回遊ルートでもある。アオウミガメやタイマイもこの地域に生息・繁殖しており、その海域は700種を超える魚類を支えていると、ディープ・シー・レポーター(Deep Sea Reporter)は伝えている。

戦争は、海水温の上昇、沿岸開発、産業活動、海水淡水化、日常的な船舶航行によって生じる圧力をさらに悪化させる。爆発や軍用ソナーは、交信や移動に音を利用する動物たちの方向感覚を失わせたり、傷つけたりする可能性がある。破損した船舶からは燃料、化学物質、残骸が流出する恐れがある。さらに研究者たちは、生態系に関する情報が最も緊急に必要とされるまさにその時に、モニタリング地点へのアクセスを失うかもしれない。

この地域は、海峡を流れる海流によって維持されている重要な植物やサンゴ礁の生息地である。国際動物福祉基金(IFAW)に寄せたエッセイの中で、アクラム・エイサ・ダーウィッシュ博士は、ここが独自のクジラやイルカの生息地でもあると説明している。「ジンベエザメは季節ごとにこの海域を回遊する。インド太平洋に生息するイルカは年間を通じて定住している。そしてアラビア海ザトウクジラがいる。この絶滅寸前の個体群は非常にユニークで、回遊を行わず、ほぼ完全にアラビア海とペルシャ湾地域にとどまっている。科学者らの推定では、残された個体数は100頭前後だ」

被害は目につきやすい大型動物だけにとどまらない。ホルムズ海峡の5つのトランセクト(調査用の測線)に沿って生息する自由生活性(非寄生性)の海洋線虫類に関する2025年の研究では、60属を代表する2189個体が確認された。これらの微小な丸虫(線形動物)は、海底堆積物の健全性や栄養循環、海洋の食物網において重要な役割を果たしている。また、その分布は科学者が環境変化を検知する手がかりにもなる。

この研究は、海面下にどれほど豊かな生物多様性が存在しているか、そしていかに多くのことが未解明のままであるかを示している。

停泊したままの船舶が世界的な問題を「輸出」するおそれ

この紛争がもたらす最も予期せぬ環境への影響の一つは、動きを止めた船の船体から始まるかもしれない。

学術誌『Biological Invasions』に2026年7月に掲載された研究によると、2月に海峡が閉鎖されて以降、1500隻以上の商業船がペルシャ湾地域に足止めされた。貨物船は通常、港への滞在や錨泊(びょうはく)を数日間しか行わない。数カ月にわたる不活動状態は、微生物、藻類、フジツボ、その他の無脊椎動物が水没した表面に定着する隙を与えることになる。

「バイオファウリング(生物付着)」と呼ばれるこの現象は、単に船の運航効率に悪影響を及ぼすだけにとどまらない。船舶が最終的に航行を再開したとき、船体に付着した生物が船とともに移動することになる。その一部は新たな水域に定着し、在来種を駆逐したり、病原体を持ち込んだり、漁業を変えてしまったりする可能性がある。

研究者たちは、この大規模な船舶のレイアップ(長期係留)が、海洋生物侵入の「スーパースプレッダー」イベントを引き起こす可能性があると警告している。長期にわたる稼働停止、温暖な海水、広大な船体表面、そしてこれらの船舶が世界規模で移動するという要因が重なることで、この混乱は通常の港湾での遅延とは異なるものとなっている。

ペルシャ湾の高温と高塩分を生き抜いた生物は、特に侵入能力が高い可能性がある。インド、スリランカ、シンガポールなど、類似した環境条件を持つ港は、より高いリスクに直面している。ヨーロッパや地中海の港にも、見慣れない外来種を乗せた船舶が到着するかもしれない。この脅威は逆説的な状況を生み出している。海峡の再開はエネルギー市場の緊張を緩和し、貿易を回復させる一方で、それと同時に世界中へと生態学的リスクをまき散らすことになるのだ。

保全は安全保障の一部である

戦争において、政府が人命の安全、外交、経済の安定を最優先するのは理解できる。しかし、環境保全はそれらの優先事項と対立するものではない。健全な海洋生態系は、食料安全保障、雇用、沿岸の保護、そして公衆衛生を支えている。

また、保全は政治的な対立で分断された地域において、共通の利益をもたらす可能性もある。イマン・エブラヒミはモンガベイ(Mongabay)の論説の中で、保全の観点からホルムズ海峡を見ることで、世界のホルムズ海峡に対する理解が変わる可能性があると主張している。「安全保障の地図の上に、ウミガメのルート、海鳥のコロニー、マングローブ、サンゴ礁、藻場、海水淡水化施設の取水口、漁場、沿岸コミュニティといった生態系地図を重ね合わせるべきだ。生態学的早期警戒システムは、エネルギーの早期警戒システムと同じくらい真剣に議論されるべきである」。この再定義は重要だ。主に軍事的緊張や石油輸送で知られる水路は、人類共通の生態学的遺産でもあるのだ。

当面の対応としては、船舶の停泊期間の記録、船体調査、最初の寄港地の予測、外来種のモニタリング拡大などが挙げられる。安全に実施可能な場合は、船舶が出港する前に付着生物の洗浄を行い、除去された生物を周囲の水域に放出するのではなく、回収して封じ込めるべきである。

これらの船を受け入れる港湾には、早期警戒システムと迅速な対応計画が必要となる。国際海事機関(IMO)にはバイオファウリングに関するガイドラインがあるが、今回の混乱の規模は、日常的な船舶輸送を前提に作られた規則が、計画外の大規模な船舶の長期係留に対応しきれていないというルールの隙間を露呈させている。

ホルムズ海峡は、今後も世界のエネルギーと安全保障の中心であり続けるだろう。しかし、その重要性によって、そこやその周辺に息づく生命が覆い隠されてはならない。この紛争の影響は、航行が再開され、原油価格が落ち着いた時点で終わるわけではない。いくつかの影響は、世界中の港へ向かう船に付着し、水面下で静かに移動していくのである。

forbes.com 原文

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