欧州は先端医療の基盤となる科学の形成に貢献してきたが、現在、商業化のペースを決めているのは米国と中国である。EUの新たな提案は、この均衡を是正できるのだろうか。
1950年代から60年代にかけてパリで行われたジョルジュ・マテの骨髄移植に関する先駆的研究から、その20年後にケンブリッジで行われたミルスタインとケーラーによるモノクローナル抗体技術に関するノーベル賞受賞研究に至るまで、欧州の研究機関は戦後、先端医療の重要な基盤を築いた。
半世紀以上を経た今も、この地域には成功を後押しするはずの要素が数多く残っている。厚みのある学術ネットワーク、専門性の高い臨床センター、成熟した医療制度、強力なライフサイエンス・クラスターである。それにもかかわらず、先端医療の開発と商業化をめぐる世界的競争において、欧州は着実に後れを取ってきた。
欧州の商業化ギャップ
その弱点の1つは、製品開発のごく初期段階に表れている。ファースト・イン・ヒューマンのデータを求める細胞治療または遺伝子治療企業は、欧州で第1相試験を実施して長い承認プロセス(約18カ月)を受け入れるか、初期段階の研究をはるかに速く進められる中国(通常約9カ月)に目を向けるかの選択を迫られ得る。一部の企業にとって、この判断はもはや無視しにくいものになりつつある。
資金調達と市場アクセスの課題も、問題をさらに深刻にしている。米国がGDPの約0.8%を革新的医薬品に投じているのに対し、現在の欧州の支出はGDPの0.3〜0.5%にとどまる。また、企業が欧州の中央販売承認を取得したとしても、調達プロセス、価格設定、保険償還の仕組みは依然として国ごとに異なる。先端医療にとって、これはもともと困難な市場投入への道のりにさらなる障壁を生み出している。
こうした状況を背景に、商業化のギャップは拡大しているように見える。最近の市場分析によれば、欧州は細胞・遺伝子治療開発において依然として世界有数の地域であり、ドイツ、英国、フランスはその主要市場に含まれる。世界全体では、この分野は2026年に約165億米ドルに達すると見込まれており、米国と中国における投資および商業化活動が大きな成長をけん引している。
状況を好転させる要因は何か
先端医療における競争力は、欧州が開発経路を最初から最後までより円滑に機能させられるかどうかにかかっている。
例えば、治験承認の迅速化は、より多くのファースト・イン・ヒューマン試験を域内にとどめる助けになり得る。しかし企業には、より調整された製造能力、コスト削減に向けた自動化と共有インフラのより効果的な活用、エビデンス創出と長期フォローアップのためのより優れた仕組みも必要である。
厳しい市場環境も、連携の緊急性を高めている。欧州が競合相手との差を縮めたいのであれば、規制枠組みを調和させ、治験実施を加速し、製造を拡大し、商業戦略を整合させる必要がある。政策立案者、開発企業、投資家、製造業者、医療制度が、より多くの開発、製造、上市活動を欧州にとどめるという実務的課題をめぐって協力すべき重要な局面である。
インフラ、アクセス、エビデンス
バイオテクノロジー法は、その対応策の重要な一部として位置づけられている。同法は、臨床試験活動の支援、バイオテクノロジーとバイオ製造の強化、資金へのアクセス改善、データのより有効な活用を目的としている。これだけで商業化の問題が解決するわけではないが、有望な科学を拡張可能な製品へと移行できるかどうかを左右する条件に、政策立案者がより直接的に焦点を当てていることを示している。
先端医療医薬品のための中核的研究拠点(CoE)の協調ネットワーク構想は、その一例である。これらの拠点は、学術機関、バイオクラスター、専門病院、製造施設を、企業が実際に活用できる形で結びつけるハブになることを意図している。小規模な開発企業にとって、そうしたインフラは元となる科学と同じくらい重要になり得る。初期研究と商業開発に進める治療法との間の隔たりを埋める助けになるからである。
一方、共同臨床評価(JCA)の導入は、エビデンスと市場アクセスに対するより協調的なアプローチの必要性に対応するものだ。2025年1月以降、新たながん治療薬と先端医療医薬品はEUレベルの臨床評価の対象に含まれるようになり、重複を減らすとともに、欧州の評価者が検討する臨床エビデンスについて、開発企業により早期の明確性を与えている。
これは、小規模試験や単群試験が一般的な先端医療にとって、とりわけ有益となり得る。枠組みが方法論上の適応を明示的に認めているためである。ただしJCAは企業に対する要求水準も引き上げる。明確な比較対象、評価項目、リアルワールドデータ戦略を初日から組み込んだ、早期かつ質の高いエビデンス計画が必要になるからだ。
並行して、英国も希少疾患治療の枠組みを改革することで、自国の規制プロセスの加速を目指している。英国政府によれば、MHRAとNICEをより一体化した経路に関する提案は、販売承認から資金提供の決定までの遅れを縮め、一部の医薬品を最大6カ月早く患者に届けることを意図している。
欧州への試練
しかし課題は、欧州の競合相手も急速に動いていることだ。米国は引き続き、豊富な専門資金、巨大な商業市場、そして高付加価値な新薬の上市に対する強力なインセンティブを提供し続けている。
一方、中国は臨床開発のスピード、製造能力、戦略的投資を組み合わせることができるため、より強力な存在になりつつある。細胞治療と放射性医薬品複合体における拡大を含むアストラゼネカの150億ドル(約2兆4000億円)の投資は、世界の製薬大手が同地域の能力をどれほど真剣に受け止めているかを示している。
重要な試金石となるのは、欧州の最新改革が商業上の行動を欧州に有利な方向へ変えるかどうかである。開発企業は初期試験の場として欧州をより頻繁に選ぶようになるのか。欧州で追加の製造能力を構築することに、より前向きになるのか。欧州市場に向けて、より大きな自信を持って資金を調達し、上市するようになるのか。
これらは単なる経済上の問いではない。欧州の患者が命を救う可能性のある治療に迅速にアクセスできるかどうか、あるいは欧州の科学に根ざしたブレークスルーが、まず他の地域で構築され、資金提供を受け、届けられるのかを左右することになる。
伝統と知識基盤を備えた欧州は、世界水準の科学を生み出せることを証明する必要はない。必要なのは、その科学をより多く域内にとどめ、資金を付け、製造し、患者アクセスを大規模に実現できることを示すことである。
それができれば、欧州には差を縮め、先端医療の自然な拠点としての評価を再確立する機会がある。



