2025年7月から2026年1月にかけて実施されたAI活用型面接1万9368件を分析したところ、候補者の38.5%がAIによる不正行為の疑いありと判定された。検出率は2025年後半の3カ月間で3倍に急増し、技術職では48%に達した。このデータは、AI面接プラットフォームであり、不正検出機能も販売するFabricによるものだ。
これは、候補者がAIを使って履歴書を磨き上げるというレベルをはるかに超えている。AIは今や、面接の回答をリアルタイムで生成し、候補者が会話に入る前に流暢に受け答えできるよう指導し、場合によっては採用担当者に気づかれないまま、ライブ面接中に回答を供給することもできる。FBIの2025年インターネット犯罪報告書は、遠隔職を得るためにオンライン面接で使われた音声なりすましや音声ディープフェイクの疑いなど、AIを利用した雇用詐欺を記録しており、報告された被害額は約1300万ドル(約20億7000万円)に上る。
従来の採用プロセスは、こうした不正を見抜くようには設計されていなかった。従来の面接は、候補者が自己をどう表現し、どのようにコミュニケーションをとり、いかに臨機応変に思考できるかを評価するために構築されたものだ。AIがその3つすべてを模倣できるようになった今、問いは「いかによりよく選考するか」ではなく、「いかに異なる方法で検証するか」に移っている。
候補者はどのようにAIで不正をしているのか
生成AIツールを使えば、候補者は職務記述書に合わせて履歴書を書き換え、経験を誇張し、実際の習熟度にかかわらずスキルを説得力のある形で示すことができる。Gartnerが3290人の求職者を対象に実施した調査では、10人中4人がすでに、履歴書、カバーレター、評価課題などの応募プロセスでAIを使用していることがわかった。よく書かれ、募集要件にぴったり合った履歴書は、もはや候補者がそこに記された経験を持っていることを示す強い証拠ではない。むしろそれは、AIツールが応募者追跡システムと、それを確認する人間の双方に最適化された書類をどれほど効果的に作成できるようになったかを示しているのかもしれない。
さらに大きな問題は、リアルタイムの面接支援だ。Cluely、Interview Coder、Final Round AIなどのプラットフォームは、面接官の音声をリアルタイムでテキスト化しながら、画面共有の範囲外である候補者自身のディスプレイに回答を表示する。面接官には何も映っていないきれいな共有画面が見えているが、候補者には台本が見えているのだ。Fabricのデータによると、若手候補者の不正率はシニア候補者の約2倍であり、また技術職の採用は、検出率が12%だった営業などの職種に比べてはるかに深刻な状況にさらされている。
より深刻なケースでは、AIは実在する候補者の見せ方を強化するために使われているのではない。候補者そのものを丸ごと捏造するために使われている。Pindropの2025年音声インテリジェンス・セキュリティ報告書は、同社が分析した通話におけるディープフェイク詐欺の試みが前年比で1300%増加し、およそ月1件から1日7件へと増えたことを記録している。採用はその標的の1つであり、FBIはリモート面接におけるディープフェイク候補者について具体的な警告を出している。その後、米司法省は、300社を超える米国企業が盗まれた身元情報の下で働く北朝鮮のIT要員を知らずに雇っていた計画を訴追した。
Gartnerは、2028年までに世界の候補者プロフィールの4件に1件が偽物になる可能性があると予測している。その規模になれば、採用チームはもはやこれを例外的な事象として扱うことはできない。
なぜこれが人事の問題になりつつあるのか
候補者が採用プロセスのすべての段階を通過したとしても、いざ働き始めると、自立して業務を遂行できないという事態が起こり得る。AIが優れた筆記テストの回答も完璧に最適化された履歴書も生成できるようになった今、それらは候補者の基礎的な能力を示す信頼できるシグナルではなくなっている。選考時と、採用されてからのパフォーマンスのギャップこそが、本当のコストの始まりだ。
そのコストは、単にミスマッチな人材を1人雇ってしまったというレベルをはるかに超える。組織がミスマッチに気づく前に、採用コストやオンボーディングへの投資、生産性の低下が累積していく。さらに、スキルのギャップがすぐに露呈する顧客対応職や技術職を中心に、チームの混乱や顧客への影響が生じることになる。
特定の職種においては、リスクはパフォーマンス不足にとどまらない。GetReal Securityの「ディープフェイク対応準備ベンチマーク報告書」では、IT、サイバーセキュリティ、リスク、および不正対策のリーダーの41%が、自社が不正な候補者を採用し、オンボーディングまで行ってしまったと回答している。身元の捏造が関わるケースは、従来の採用ミスマッチとは異なり、セキュリティやコンプライアンス上のリスクを伴う。特に、機密性の高いシステムやデータへのアクセス権が与えられるリモートワークの職種では、その危険性が極めて高くなる。
人材を評価するために設計されたシステムは、そもそもその「人材」が人工的なものであるかを見抜くようには作られていない。多くの雇用主は今も、自身の直感に頼っている。Checkrが3000人の採用担当マネージャーを対象に実施した調査では、59%が「採用プロセスの最中に、候補者がAIを使って実態と異なる自己アピールをしていると疑ったことがある」と回答した。大手テック企業の面接官の間ではその疑念はさらに強く、FAANGおよびそれに準ずる企業の面接官を対象にしたinterviewing.ioの調査では、81%がAIによる不正を疑い、約3分の1が実際にその現場を押さえたと答えている。しかし、疑念を抱くことと、実際に検知することは異なる。信頼できる検知方法がなければ、採用の意思決定は一種のギャンブルになってしまう。
候補者がAIを使う時代に、人事はどう正確に採用すべきか
AI支援による候補者の不正に対抗するには、より優れた検出ツールだけでは不十分だ。AIが候補者本人の本物の能力に置き換わる余地を小さくするために、採用プロセスの一部を再構築する必要がある。
履歴書を「証拠」として扱う前に検証する
履歴書は「何を検証すべきか」を特定するためのものであるべきで、候補者が適格であるかどうかを確定させるものではない。職歴、資格、リファレンス、認定資格、そして関連する実務経験は、採用の意思決定に反映させる前に検証されるべきだ。履歴書は会話の入口である。検証こそが、その主張が成り立つかどうかを決める。
候補者が実際にできることをテストする
採用プロセスにおいては、職務に応じた課題、実技評価、ケーススタディ、ポートフォリオなどの実例を通じて、候補者がスキルを実証できる機会を設けるべきだ。これらの手法により、評価の焦点を「書面上でどれほど優れて見えるか」から、「実際に何を作り出せるか」へとシフトさせることができる。目的は、プロセスからAIを完全に排除することではない。AIが候補者の代わりに仕事をこなしてしまわないようにすることだ。
候補者の回答そのものを軸に面接を組み立てる
ありきたりな質問を重ねるよりも、候補者の直前の回答を掘り下げる方が効果的だ。自身が下した決定の理由を説明させたり、自らの経験に基づく事例についてさらに詳しく語らせたり、あるいは条件が1つ変わった場合に結果がどう変化するかを論じさせたりすることで、候補者自身が提出した内容を本当に理解しているかを確かめることができる。会話が自身の経験の具体的な細部に及ぶと、用意された回答やAIが生成した回答に頼ることは極めて困難になる。
プロセスの中に人間の判断を残す
AIを用いた不正への対策は、自動化された選考プロセスをさらに増やすことではない。それでは、本物の候補者が、何が本物かを推測するだけのシステムによってふるい落とされてしまうという、別パターンの同じ問題を引き起こすリスクがある。テクノロジーは身元確認や不正検知をサポートできるが、それは人間の判断を代替するものではなく、補佐するものであるべきだ。最も有効なアプローチは、採用の意思決定において最もリスクの高い場面で、検証、実技評価、そして人間による監視を組み合わせることだ。
AIを悪用した候補者による不正の増加は、候補者の道徳性の問題ではない。採用インフラの課題であり、データはそれが悪化していることを示している。履歴書、面接、筆記試験の回答は、今や洗練されたアウトプットを生み出すツールによって、本物の実力と見分けがつかないレベルで作成できてしまう。この状況にさらなる自動化を重ねても解決にはならない。解決策となるのは、より強固な検証、実践的なスキル評価、そして候補者が「事前に準備した発言」ではなく「実際に知っていること」を軸とした面接だ。その目的は、採用を難しくすることではない。偽装するのを難しくすることだ。



