今日の市場には、モノがあふれている。最近買い物をした人なら、さまざまな製品が競い合うようにして自分の目を引こうとしたのを覚えているだろう。より低価格でより多くの機能や利便性を手に入れるなど、「より少ない対価で、より多くのものを得る」機会を目にしたこともあるはずだ。
ビジネスリーダーたちは、こうした豊かさに満ちた市場の形成に一役買ってきた。しかし、筆者はリーダーたちに、ある重要な問いを自問するよう促したい。「この豊かさの裏にあるリスクとは何か」ということだ。
「使い捨て」がもたらす危険性
手軽な入手性やイノベーションには、一見しただけでは分からないトレードオフが存在する。例えば、製品の耐久性が低下し、修理が難しくなることがある。消費者が職人技(クラフトマンシップ)に対して抱く感謝の念も薄れていくかもしれない。価値が「質」ではなく(あるいは「質」以上に)「量」で測られるようになると、人々はすぐに使い捨ての便利さに安住してしまう。
使い捨ての思考は、新しい家具や衣服、家電製品、家庭用品を次々と買い替えるという行為よりも、さらに深いところにまで及ぶ。それは私たちの考え方の変化を反映している。具体的には、「これは長持ちするように作られているか」という問いから、「とりあえず今はこれで十分か」という問いへのシフトを意味する。
このシフトは小さなものに思えるかもしれないが、リーダーや消費者としての私たちの期待を塗り替えてしまい、リスクを伴うと筆者は考えている。修理するよりも買い替える方が簡単になると、私たちは一時的な解決策を当たり前のものとして受け入れがちになる。購入、廃棄、アップグレードを繰り返すサイクルに陥りやすくなり、単なる「活動」を「進歩」と見誤ってしまうことが多々ある。
そのために私たちが支払う代償は、金銭的なものや環境的なものにとどまらない。2022年に発表された研究では、次のような結果が示されている。「強い物質主義的価値観(MVO)を持つ人々は、より多くの金銭や高価な物質的財産を手に入れることが、自身の幸福や社会的地位の向上につながると信じている。だが逆説的ながら、幸福度を高める手段としてさらなる金銭や物質を追い求めることは、往々にして生活の質を損なうことになる」
何かを買った瞬間には短い満足を覚えるかもしれないが、それが消えた後、私たちは次の購入を求め始めてしまう。
品質を追求することのビジネス上の意義
リーダーとして、競争のために基準を下げるべきではない。確かに基準を下げれば、消費者も最終的にはその基準を受け入れるかもしれない。しかしその結果、製品は使い捨てられ、修理は稀になり、買い替えが常態化し、職人技が衰退していくという悪循環が続いてしまう。
だが企業にとって、最も安価な選択肢は、結果的に最も高くつく決断になり得る。粗悪で短期間しか持たない製品を販売すれば、消費者は何度も買い替える必要に迫られる。時間が経つにつれ、その企業は市場で製品品質に関する悪評を買い、消費者は競合他社へと流れていくだろう。対照的に、何年も長持ちする丁寧に作られた製品は、消費者に大きな価値をもたらし、企業の評判を高める。家具業界に身を置く筆者は、ダイニングテーブルや椅子のように、細部までこだわり抜いてデザインされた家具が、単なる一時的な所有物ではなく、家族の歴史の一部となっていく様子を目の当たりにしてきた。
高級デザインの世界において、優れた製品は外観だけでなく、その背景にある決断、すなわち素材、プロポーション、職人技、ディテール、そしてすべての工程に注がれたこだわりによって定義される。筆者の経験では、最初はこうしたディテールについて妥協した顧客が、後にそれらを求めて戻ってくることがよくある。ここから得られる教訓はシンプルだ。リーダーである私たちが削ぎ落としてしまうディテールこそが、最終的に消費者が最も価値を置く体験を生み出すのである。
持ち続ける価値のある製品を作る重要性
リーダーとして、「どうすればこの製品をより安く作れるか」ではなく、「どうすればこの製品を持ち続ける価値のあるものにできるか」と問いかけることを勧めたい。
筆者の考えでは、「どうすればこの製品を持ち続ける価値のあるものにできるか」という問いこそが、未来を変える力を持っている。なぜなら、製品作りにおいて「意味」と「耐久性」を優先させるようになるからだ。
誤解のないように言っておくと、筆者は手頃な価格設定やシンプルさを否定しているわけではない。意図を持ってデザインされた製品であるために、高価であったり複雑であったりする必要はない。使う人にとって持続的な価値を提供できればよいのだ。私たちの目標は、手の届かない製品を作ることではなく、消費者に長期的な価値を提供できるよう、意図を持って製品を創り出すことであるべきだ。
リーダーとして、自らの仕事にさらなる期待を寄せるべき
これは、誠実さ、職人技、責任ある消費、好奇心などを重視することを意味する。
品質と熟考されたデザインを通じてこそ、私たちは長持ちする製品を生み出し、使い捨てよりも「意味」が優先される文化を育むことができる。
未来は、最も多くのモノを生産する企業ではなく、人々が本当に価値を認める製品を作る企業のものになると、筆者は信じている。



