NASAの次世代超大型ミッションである宇宙望遠鏡が、いよいよ打ち上げの時を迎えようとしている。ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(RST)は、早ければ米東部夏時間30日午前7時26分(日本時間同日午後8時26分)に、フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースXの大型ロケット、ファルコンヘビーで打ち上げられる。
当初の計画を約9か月前倒ししての打ち上げとなるローマンは、史上最も強力な宇宙望遠鏡の1つになると期待されている。その理由はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)に比べて、より遠くを見通せるからではなく、一度により広い宇宙の領域を見ることができるからだ。NASAの天体物理学部門を統括するショーン・ドマガル・ゴールドマンは、7月29日の記者会見で「ローマンは、現在では不可能なことを成し遂げようとしている」として「9か月前倒しでの打ち上げとなるが、それ自体が驚くべき偉業なのだ」と語った。
この記事では、打ち上げまでに知っておくべき10のポイントについて紹介する。
1. 「ハッブルの母」にちなんで命名
この望遠鏡は、宇宙望遠鏡計画を推進したNASAの初代主任天文学者、故ナンシー・グレース・ローマン博士を記念して命名されている。地球の大気圏外に望遠鏡を配置するローマン博士の構想は、ハッブル(HST)、チャンドラ、スピッツァー、JWSTと最新のローマンに至るまでのNASAの宇宙望遠鏡群の基盤を築いた。「ローマン博士は優れた天文学者だった。地上からの観測の妨げとなる地球大気の外に望遠鏡を設置できれば、どれほど強力な観測能力が得られるか、さらには、これによって地上から行える天文学をどのように補完できるかを、博士は認識していた」と、ドマガル・ゴールドマンは指摘した。
2. ローマンはHSTやJWSTの代替機ではない
むしろ、HSTやJWSTと相補的な関係にある。ドマガル・ゴールドマンは、NASAの宇宙望遠鏡群の観測を、森の写真撮影に例えている。HSTやJWSTは、森の中の木1本1本や葉1枚、鳥1羽にズームインできる。それに対し、ローマンは「その両方を同時にこなす。森全体を見渡せる広大な視野を持ちながら、木々の葉や枝に止まる鳥まで捉えられる鮮明さを兼ね備えているのだ」という。個々の天体に焦点を合わせるのではなく、複数の天体がより広範な宇宙の領域にどのように収まっているかを明らかにする。ドマガル・ゴールドマンの例えでは、森が既知の宇宙で、木々や鳥が超新星や銀河、惑星や恒星を指している。
3. 20億個以上の銀河を地図化
ローマンによる最大規模の観測では、宇宙のさまざまな時代の銀河20億個以上の位置を記録し、宇宙空間での観測から得られた史上最大規模の宇宙パノラマ地図を作成する。ローマンが搭載する広視野観測装置(WFI)は、HSTと同じ口径2.4mの主鏡と、HSTの100倍以上広い視野を組み合わせて用いることで、NASAが過去に運用したどの宇宙望遠鏡よりもはるかに速いペースで広大な空の領域を調査することが可能になっている。
4. ほぼ計り知れないスケールの画像
ローマンによる最大規模の観測では、途方もないスケールの画像が得られる見通しだ。NASAゴダード宇宙飛行センター(GSFC)のシニア・プロジェクト・サイエンティストを務めるジュリー・マケナリーは「ローマンによる最大規模の観測で撮影される画像1枚をフル解像度で表示するには、4Kテレビが50万台以上必要になる」として「4Kテレビを敷き詰めると、マンハッタンの街区45個分、あるいは、ヨセミテ国立公園にある一枚岩の巨大岸壁エル・キャピタンを覆いつくせるほどの面積になる」と説明している。



