AI

2026.08.30 11:00

AI「チップフレーション」は関税並みの物価上昇圧力、米連銀分析

stock.adobe.com

stock.adobe.com

コンピューター向けハードウェアに対するAI(人工知能)需要が膨れ上がり、米国のコアインフレを押し上げている。押し上げ幅は、ドナルド・トランプ大統領が2025年初めに発動した関税による分と同じ規模だ。ミネアポリス連邦準備銀行(連銀)の研究者による分析で明らかになった。

関税転嫁がついに始まり、AI需要も物価を同じだけ押し上げ

米国時間8月28日に公表された分析によると、消費者物価への影響がようやく表れ始めた関税は、2026年7月時点でコアPCEインフレ率を0.2〜0.4ポイント押し上げている。コアPCEインフレ率とは、値動きの激しい食品とエネルギーを除いた個人消費支出(PCE)価格指数の前年比上昇率を指す。

7月までの1年間でみたコアPCEインフレ率は3.3%に達した。2023年以降で最も高く、コロナ禍の時期を除けば1990年代初め以来の水準である。3.3%という上昇率のうち、関税が押し上げた分は0.2〜0.4ポイントに当たる。

関税コストが消費者に到達、衣料品と靴が3.5%上昇

関税コストが消費者に届き始めたことを最も明確に示すのは、衣料品と靴だ。年間の上昇率は2025年12月時点で0.3%だったが、2026年7月には3.5%へ跳ね上がった。

関税による値上がりは、これから表面化する分がまだ残っている。新車のように重い関税がかかる分野では、コスト増を価格へ完全には転嫁し切れていない。最近の調査では、企業が関税に絡む値上げをさらに実施する計画だと示されている。

毎年下がっていた映像・情報処理機器が、12.2%の上昇へ反転

ミネアポリス連銀の研究者は、仮に関税がまったくなかったとしても、コアPCEインフレ率はFRB(米連邦準備制度理事会)が掲げる2%目標を1ポイント上回っていたはずだと述べている。

関税と並んで物価を押し上げているのが、AIが生み出したメモリーとコンピューターハードウェアの需要だ。米統計で映像・情報処理機器に分類される品目の価格は、2026年7月までの1年間で実に12.2%も上昇した。コアPCEインフレ率を約0.4ポイント押し上げており、関税全体による寄与分に匹敵する。

映像・情報処理機器の価格は、2015年から2019年にかけて毎年6.5%ずつ下がり続けていた。値下がりが当たり前だった品目が12.2%も上昇したことは、AI関連ハードウェア需要が引き起こした異例の反転を示している。

チップフレーションが家計を直撃、パソコンやタブレットも値上げ

ミネアポリス連銀が報告書で挙げたAI起点の価格急騰は、俗に「チップフレーション」と呼ばれている。原因は、テクノロジー業界全体で供給が需要に追いつかなくなっていることにある。マイクロソフト、グーグル、メタ、アマゾンをはじめとする世界の主要テック企業は、いずれも衝撃的な速さでAI事業へ投資しており、しかも各社が必要とするハードウェアはどれも同じものだ。

高性能なAIモデルを構築し学習させるには、CPU、メモリー、GPUおよびビデオメモリー、ストレージ、冷却システムといったハードウェアが桁違いの規模で必要になる。結果として、必要となる部材の価格は軒並み急騰し、個人向け製品の値札にまで波及した。アップルは6月、MacBookとiPadの価格を15〜25%引き上げた。レノボ、デル、HPも同様に値上げに踏み切り、スマートフォンメーカーやゲーム機メーカーも価格を引き上げている。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事