量子センシングが足元の売上を稼ぎ、長い量子コンピューター開発を支える
インフレクションにとって、量子コンピューティングは長期の企業価値を生む柱である。一方、量子センシング事業は足元の商用売上を稼いでいる。量子センシングとは、原子が示す一定の性質を基準にして、時間や重力を極めて高い精度で測る技術を指す。
第2四半期に前年同期比で売上高を押し上げた最大の要因は、NASA向けに進める量子重力勾配計プログラムを着実にこなしたことだった。量子重力勾配計とは、重力のごくわずかな変化を測る装置である。
同社はまた、第3世代となる光原子時計「Tiqker」の商用展開を積極的に進めている。原子が持つ固有の振動を使い、極めて正確に時を刻む装置だ。Tiqkerの製品群は、防衛・航空宇宙分野で国際的な大手一次サプライヤーであるフランス企業サフランと結んだ、世界規模の共同販売契約に支えられている。
量子コンピューティングと量子センシングという2本立ての収益構造は、量子コンピューティング専業が背負う、長く資本負担の重い開発期間から、同社をある程度守っている。
エヌビディアとの提携が、量子コンピューティングとAI基盤をつなぐ
エヌビディアとの提携は、量子技術を既存のGPU基盤と橋渡しし、AIデータセンターを運営する事業者にとって量子コンピューティングをより手の届くものにすることを狙っている。インフレクションの量子処理装置(QPU)「Sqale」は、エヌビディアの「NVQLink」に接続される。NVQLinkは、量子処理装置とGPU搭載スーパーコンピューターを結ぶためにエヌビディアが用意した接続基盤で、量子スーパーコンピューティングとのリアルタイムな連携を可能にする。
もちろん、エヌビディアと組んだからといって、インフレクション株が何倍にもなると保証されたわけではない。それでもこの提携は、インフレクションの技術に対する重要なお墨付きになる。さらに、GPUによる従来型の計算と量子コンピューターによる計算という、今後ますます一緒に働くようになるかもしれない2つの方式を結ぶ、強力な接点を生む。
トヨタが支えたジョビー株から、後ろ盾の重みを学んだ
私はエヌビディアとの提携を高く買っている。かつて私は、ジョビー・アビエーション株を取り上げ、少しばかり保有していたことがある(開示:現在は保有していない)。理由の1つは、トヨタが後ろ盾についていたことだった。だからといって、順風満帆だったわけではない。ジョビー株も値動きは荒く、上昇に転じるまでたっぷり時間をかけた。それでも、最後には上がった。
新しい技術には同じ理屈が当てはまると私は考えている。初期段階の技術に資金を出し、あるいは手を組もうとする企業や機関の質は、従来型の業績指標に劣らず重要になり得る。


