リーダーにとって、現場で何が起きているかを把握する手段はかつてないほど多様化している。現在の企業は、歴史上のどの時点よりも多くのダッシュボード、ポータル、データフィードを駆使して運営されている。AIはかつて1週間かかっていた作業を凝縮し、会議が始まる前までに要約を完成させてくれる。
こうした可視性の高まりは、リーダーにある誘惑をもたらす。現場の現実ではなく、画面に映し出された情報に基づいてビジネスの意思決定をしてしまうことだ。私のキャリアの初期、このようなアプローチをとる人々を指す言葉があった。私たちは彼らを「747」と呼んでいた。伝説的なボーイング747のように、地上に降り立つことなく、上空を飛び去ってしまうからだ。
トヨタの技術者たちは、この弊害に対する特効薬となる言葉を持っていた。彼らはそれを「現地現物」と呼んだ。自分で現地に行き、自分の目で確かめるということだ。その原則はシンプルで、どんな報告書も、現場に身を置いて実際の状況を観察することの代わりにはならない、というものだ。つまり、「地図は現地(実際の土地)ではない」のである。
私が知る、そしてこれまでに提携してきた優れたリーダーたち(私たちが配信するシリーズ「Work Ethic」でインタビューしたウェルスマネジメント分野の偉大なリーダーたちを含む)は、このことを直感的に理解している。彼らは単に地図を読むのではなく、自ら現場に立つことで組織を率いている。
「距離」が生むバイアス
現場から遠ざかろうとする力は、往々にして構造的なものだ。多くの企業が規模を拡大し、階層が重なるにつれて、役職が上がると、かつてそのリーダーを優秀たらしめた現場の仕事から退くことが、暗黙のうちに推奨されるようになる。
a16zペレニアル(a16z Perennial)の最高投資責任者(CIO)であるミシェル・デル・ブオノは、Work Ethicで対談した際、この罠について言及した。シニアリーダーの地位に就くと、仕事の鼓動を身近に感じ続ける意欲が削がれやすくなると彼は指摘する。そのため、彼は採用する人材に異なる資質を求めている。「私が常に探しているのはプレイングコーチであり、単なるコーチではない」。
Ethicにおける私のリーダーシップチームは、2つの次元のバランスを評価している。それは、「実務への参画(現場に立ち、細部にこだわること)」と「事業への関与(俯瞰して方向性を見出すこと)」だ。重要なのは、この2つの適切なバランスを追求することであり、現在ではAIがリーダーにその両方で強力な手段を提供している。もはや、現場や細部に十分な時間を割かないことの言い訳は通用しない。
この距離によるバイアスが最も重大な結果をもたらすのは、プロダクト開発の現場だ。LNWの最高投資責任者であるロン・アルバハリーは、アドバイザーと一度も時間を共にしたことがない人々が開発したツールを、数十年にわたり評価してきた。私に対する彼の評価は率直だった。ウェルスマネジメント業界向けの製品を開発する人々の多くは、アドバイザーが実際にどのように考えているかをまったく理解していないというのだ。
キャリアの初期、彼はこれとは逆のことを行った。フォーカスグループのマジックミラーの裏側に座り、アドバイザーがプロトタイプに悪戦苦闘する様子をリアルタイムで観察したのだ。これこそ、プロダクト開発に適用された「現地現物」である。顧客の信頼を勝ち取るプロダクトは、業界レポートを読んだり仕様を想像したりするだけで開発されるのではなく、現場の摩擦や顧客体験に寄り添い、ボトムアップで設計されるものだ。
「シグナル」を見つけ出す
細部に入り込むということは、すべてのデータポイントに溺れることではない。ノイズからシグナルを素早く見分ける能力が必要となる。
シグナルを見つけるための私の標準的なアプローチは、データに触れる前に、システムがどのように機能しているかのメンタルモデルを構築することだ。このモデルの設計は、現場に立ち、今日の業務がどのように機能しているかを観察し、明日どのように機能し得るかを想像することから生まれる。
オペレーションシステムを例にとると、まず私たちが何を最適化しようとしているのか(成長、効率、あるいはリスク)から始める。次に、業務を最も細かい個別の作業に分解し、変数間のつながりをマッピングする。そして、システムに負荷をかけてどこで破綻するかを確認し、実際に重要となる数少ない変数(通常は2〜3個)を浮き彫りにする。それをチームが現場で見ている現実と照らし合わせて検証し、改善していく。
自分が何を探しているのかが明確になって初めて、本当に必要なデータに焦点を当てる。その後の仕事は、クリーンなデータセットを構築し、それを適切なチャネルを通じて透明性をもって伝えることだ。
これらすべてが意味するのは、データは「現地(実際の地形)」と密接に結びついて初めて有用になるということだ。
現場の最前線で築かれるもの
細部を把握することは、意思決定を鋭くするだけでなく、リーダーがチームの信頼を勝ち取るための手段でもある。優秀な人材は、組織図を基準に行動するわけではない。彼らはリーダーが実際に何をしようとしているのかを見ているのだ。
アルバハリーは、最前線からその信頼を築いている。「まずは私からだ」と彼はWork Ethicで私に語った。彼は自ら進んで表に立ち、ミスを「早く、頻繁に」認めることで、チームが安心して主体的に行動できるようにしている。
デル・ブオノは端的にこう表現した。「リーダーシップは勝ち取るものだ。授けられるものではない」。それを勝ち取る場所は、仕事が行われるまさにその現場であり、実際に業務を担う人々と肩を並べることによってである。
事業の方向性と実務の現場
「実務への参画(現場での仕事)」と「事業への関与(全体を俯瞰した舵取り)」の適切なバランスをとることは、リーダーシップにおける難しい課題だ。この調整をうまく機能させるために、自分自身に問いかけるべきいくつかの質問を以下に紹介する。
・現場との距離:最後に自ら顧客にプロダクトの売り込みを行ったり、カスタマーサービスの依頼に対応したりしたのはいつだろうか。思い出せないようであれば、現場から遠ざかりすぎている可能性が高い。
・シグナル:最近観察したオペレーションの細部で、良い意味でも悪い意味でも驚かされた小さな出来事は何か。思い浮かばない場合、距離によるバイアスのせいで、現状が不鮮明に見えている可能性がある。
・設計:新しいプロダクトや機能を開発する際、顧客が代替前の製品を使用している様子を観察しただろうか。もし唯一の根拠が仕様書だけであるなら、それは現地を見ずに「地図」から設計していることになる。
「現地」を信頼する
AIの普及は、細部を飛び越えてしまうリーダーと、細部に着地するリーダーの格差を広げるばかりだろう。より鮮明な地図と素早い要約により、これまで以上に画面越しでの指揮が容易になっている。優れたリーダーはその両方を兼ね備えている。全体を俯瞰して方向性を読み解き、それから真実が眠る細部へと戻っていく。そして、地図と現地に相違があるとき、彼らは「現地」を信頼するのだ。



