最高財務責任者(CFO)になる道筋がかなり予測しやすかった時代があった。専門的なスキルを磨き、財務部門で昇進し、その過程でより大きな役割を担っていく、というものだ。その道筋はいまも重要である。だが、それだけではもはや十分ではない。
今日の財務リーダーには、事業全体を横断して機能することが期待されている。戦略に意見を述べ、事業がどのように動いているかを理解し、テクノロジーとデータを深く把握し、主要な取り組みを前進させることが求められる。有能な財務リーダーと、極めて重要なビジネスパートナーとの違いは、多くの場合、その役割にもたらす経験の幅広さによって決まる。
CFOの「ツールベルト」
この考え方を理解する一つの方法として、大工の「ツールベルト(道具袋)」にたとえてみよう。
家を建てるなら、ハンマーだけを持って現場に向かうことはない。まず、その開発に対するビジョンを描けなければならない。さらに、骨組み、配管、電気工事、そしてそれらのシステムがどのようにつながるかを理解する必要がある。問題解決者であり、優れたコミュニケーターであることも求められる。人を管理し、スケジュールを調整し、プロジェクトを予算内に収める必要もある。これらの能力はそれぞれ、あなたの「ツールベルト」に入る異なる道具を表しており、ツールベルトが充実しているほど、リーダーとしての有効性は高まる。
財務リーダーにも同じことがいえる。財務の専門スキルは土台である。しかしそれを超えて、現代のCFOには、部門を横断して機能し、意思決定が現実の世界でどのように作用するかを理解するための、より幅広い能力が必要だ。実務上、それは従来の財務教育の範囲外にある一連の能力として表れる。たとえば、次のようなものだ。
オペレーションへの洞察力
財務は成果を評価し、将来の成果を予測する助けとなる。一方、オペレーションは、その成果を生み出すプロセスの内部にある。事業を動かす中心には顧客がいる。オペレーションの現場で長年過ごしてきたリーダーであれば、スプレッドシートにはきれいに表れないトレードオフ、すなわちサービス水準、ワークフロー上の制約、顧客体験を理解しやすい。大規模なオペレーションチームを率いるリーダーは、財務モデル上では単純に見える意思決定が、サービス提供や顧客体験が関わるとより複雑になることをしばしば実感する。
テクノロジーへの精通
テクノロジーは、企業の運営や競争のあり方に深く組み込まれている。CFOが技術的なバックグラウンドを持っているかどうかにかかわらず、システムに関する意思決定、データ戦略、デジタル投資に関与する機会は増え続けている。これらの意思決定を効果的に行うには、テクノロジーに近づき、テクノロジー部門の責任者と連携し、どこで、いつ投資を行うべきかについて足並みをそろえる必要がある。
顧客理解
財務業績は顧客行動を反映する。顧客がなぜ購入するのか、製品やサービスをどのように体験しているのかを理解しているリーダーは、業績を現実世界の要因とよりうまく結びつけることができる。営業や事業開発など商業部門での経験は、しばしばリーダーの価値提案への意識を研ぎ澄ます。つまり、提供するものを差別化している要素と、顧客がそれを選ぶ理由を真に理解することにつながる。
人材を率いる力
部門を横断して率いるには、財務部門内でリードする場合とは異なるスキルセットが必要である。チームごとに動き方は異なり、有効なリーダーはメンバーを惹きつけ、方向性を一致させる方法を心得ている。財務チームとオペレーションチームの双方を管理した経験を持つリーダーは、機能やグループの違いに応じて、動機づけやコミュニケーションの方法を柔軟に変えることに長けている場合が多い。繰り返しになるが、これは部門横断の経験を持つリーダーによって最も効果的に実行される。
大規模な実行力
統合、変革、システム導入といった大規模な取り組みには、組織全体での調整が必要である。その仕事は分析だけに依存するものではない。規律ある実行が求められる。買収や大規模プログラムの経験は、財務リーダーに対し、戦略をチーム横断の協調した実行へと落とし込むことを迫る。
財務リーダーはこの経験をどう築くのか
こうした能力は、財務の外に踏み出さなければ身につけるのが難しい。
多くの財務プロフェッショナルはキャリアの大半を財務機能の中で過ごすため、構造化された思考パターンが強化されやすい。しかし、事業の中へさらに踏み込むことができれば、オペレーション上の意思決定にはトレードオフが伴い、競合する優先事項のバランスを取り、ときには不完全な情報のもとで判断する必要があることを、より深く理解できる。
だからこそ、最も価値のあるキャリア上の異動の中には、従来型の財務職には見えないものがある。
・財務部門外のプロジェクトを率いる
・別の機能部門のチームを管理する
・一時的であっても、オペレーションの役割を担う
こうした経験はいずれも、事業の見方と、その中でのリーダーシップの発揮の仕方を変える。
リーダーシップの信頼性においてこれが重要な理由
経験の幅は、単にスキルセットを広げるだけではない。リーダーとしての立ち居振る舞いを変える。
他のチームがどのように機能しているかを理解し、顧客の視点を通して物事を見る財務パートナーは、より洞察に富んだ質問を投げかけ、より実践的な助言を提供する傾向がある。彼らはトレードオフへの対処においてもより有効である。なぜなら、それを自ら目の当たりにしてきたからだ。
その信頼性は、直接の経験なしに再現するのが難しい。
組織にとっての意味
組織にとって、この変化は財務人材の育成方法に影響を及ぼす。
将来のCFOを育てることは、もはや専門スキルの研修だけを意味しない。財務プロフェッショナルが事業全体に触れる機会を、計画的なローテーション、プロジェクトの主導、部門横断的な役割などを通じて創出することが必要である。この種の経験は極めて重要である。私自身、キャリアを通じて得た部門横断の経験が、ブラウン&ブラウンでの現在の役割への道を開いた。
個人にとっての意味
個人にとっての要点は明快である。
より幅広いリーダーシップの役割へ成長したいなら、自分の中核となる専門領域の外へ踏み出す必要がある。それは多くの場合、自分が明らかな適任者ではない任務や、仕事内容になじみがないと感じる仕事を引き受けることを意味する。新しい筋肉を鍛えるために新しい運動をするようなものだ。
そうした経験は居心地の悪いものになり得るが、多くの場合、成長を最も加速させるのはそうした経験である。



