しかしながら、その後実刑判決が確定し、2010年12月9日にMcKean連邦刑務所へ収監された。自宅軟禁を経て、2013年4月に釈放された。1999年から2001年にかけて、スナイプ氏の脱税額は700万ドル(8億5,400万円)にのぼるとされる。スナイプ氏は法律上の納税義務を否定し脱税に手を貸すアドバイサーの指示に従った。
当初、スナイプ氏はエディ・レイ・カーンとダグラス・ロジルという2人のアドバイザーにすべてを任せていたと主張。実際に彼らは脱税詐欺と陰謀の容疑で有罪となり、スナイプ氏より長期にわたって服役した。スナイプ氏は著名人かつ高所得者であるゆえ-実際に1999年から2004年までの所得は4,000万ドル(48億8,000万円)にのぼっていた-世間は彼が税金を払っていないなど思いもおよばなかった。
スナイプ氏が脱税に関する詐欺と陰謀に関する容疑について無罪となった点では、彼に大きな軍配が上がったといえる。スナイプ氏は所得税を虚偽申告したわけではない。しかしながら、それでも3年の刑期が言い渡された。その点について、判決は不当であるとしスナイプ氏は告訴したのだ。さらに、フロリダでの裁判は、彼が黒人であるゆえ公正さに欠けていたと主張。その点について、米国最高裁判所は彼の訴えを棄却している。
現在、スナイプ氏がIRSを訴えているのは、租税に関することだ。多額の所得脱税事件で被告になると、その問題が他の税金にも影響してくる。IRSは裁判で確定した合意金額や裁判所の判決だけをもとに脱税分を徴収したいのではない。IRSはありとあらゆる方法で、他に納められていない税金があれば請求書を送り続けるのだ。通常、IRSの意向通りの結果となる。
スナイプ氏がIRSを訴えているのは、こうしたIRSのやり方に反旗を翻した格好だ。同氏は納税に関する負債を解決し、前へ進もうとしている。スナイプ氏の弁護士は、この件についてIRSと交渉を重ねていたが、最終的にはIRSを訴えることとなった。2013年に、IRSは10年以上もさかのぼって、スナイプ氏の未納額を以下のとおり見積もった。
1999 – $177,263.99(約2,160万円)
2001 – $2,573,977.70(約3億1,400万円)
2002 – $1,497,644.97(約1億8,270万円)
2003 – $4,576,925.66(約5億5,830万円)
2004 – $5,625,612.45(約6億8,630万円)
2005 – $3,526,946.38(約4億3,020万円)
2006 – $5,777,543.18(約7億1,060万円)
これらの数字は、スナイプ氏が刑務所から出てくるタイミングで伝えられた。それを受けて、スナイプ氏は協議によって双方が妥協点を見いだせるよう求め、Collection Due Process Hearing を開くようIRS側へ求めた。その時点で、彼はまだIRSと協力して解決策を探ろうとしていた。実際に、彼は1999年と2002年分については支払いを済ませている。
そして2014年に、スナイプス氏はすでに支払いを済ませた2002年分をのぞく2001年から2006年までの5年分について、IRSと妥協点を見つけ双方合意のもと解決するよう申し入れた。2014年の夏までは、弁護士とIRS側は協議を進めており、スナイプス氏はIRSが必要とした追加資料も差し出している。2015年3月までの時点で、IRSは6,416,396ドル(7億8,280万円)で合意するかのようにみえた。
しかし、IRSは突然その額を18,116,396ドル(22億1,000万円)に引き上げたのだ。 IRSは、本来支払われるべき税金を値下げするのではなく、新たに17,482,152ドル(約23億5,000万円)の未納分を積み上げスナイプ氏側へ請求する手段にでた。これに対し、スナイプ氏は公判でIRSは職権を乱用していると厳しく批判した。
結局のところ、今回のようにIRSが未納分の税金に関して協議で合意をはかる真の目的は、納税者と政府双方の最善の利益になることを前提にしており、要は納税者の法令順守を前提に問題を解決し前進させることなのだ。
IRSは2012年3月21日に「フレッシュスタート・イニシアティブ」を施行した。このプログラムの本来の目的は、納税者に対して、税に関する法令順守を徹底させ、過去を改め新たな出発の機会を提供することにあり、経済的に苦境にある納税者が税に関する問題を解決できるようデザインされたものだ。スナイプス氏は今回の裁判を通じ、IRSが本来与えられた役割を果たし健全に機能するよう求めている。