途中で何かを投げ出してしまったとき、その理由はたいてい、本人の性格や資質のせいにされる。開始から6週間ほどでモチベーションが低下したからだとか、そもそも自己管理能力が足りなかったからだといった具合だ。挫折した本人もその評価を受け入れてしまいがちであり、それゆえに本当の原因が検証されないまま放置されてしまう。
一方で、物事を確実に最後までやり遂げる人々は、自らを「並外れた意志の強さの持ち主」だとは説明しない。詳しく尋ねると彼らが語るのは、最初の1カ月の進め方と5カ月目の進め方は異なっていた、ということだ。時間の捉え方が途中で変化しており、しかも多くの場合、それは自発的な意思によるものではない。
この変化こそが、習慣の正体である。筆者はこれを「テンポラル・スイッチング(時間的切り替え)」と呼んでいる。複数の「時間のモード」を使い分け、自分が現在置かれているモードが目の前のタスクに適さなくなったときに、それに気づく能力のことだ。
途中で挫折してしまう人は、決して怠け者なわけではない。むしろ「一貫しすぎている」のだ。そのやり方が通用しなくなった後も、不適合なアプローチを頑なに維持し続けてしまう。
3つの時間の概念
この習慣を説明するための語彙は、心理学の誕生よりもはるか昔から存在する。古代ギリシャ語では、英語の「時間(time)」にあたる言葉に、いくつかの異なる単語を使い分けていた。
1.「クロノス(Chronos)」は、測定可能な時間のことだ。時間、日付、締め切りなどを指し、カレンダー上のスケジュールに相当する。
2.「カイロス(Kairos)」は、「好機(適切な瞬間)」を指す。どれだけの時間が経過したかではなく、行動を起こすための条件が十分に整っているかどうかという概念だ。
3.「アイオン(Aion)」は、長期的な視野のことだ。時計の針ではなく、アイデンティティや意義を通じて経験される時間を意味する。
プラトンの対話篇『ティマイオス』では、測定される時間(クロノス)は、それが模倣する永遠の全体(アイオン)と対比されている。なお、カイロスはプラトン特有の思想というよりも、より広いギリシャの伝統に由来する。



