皮膚に生息する細菌で圧倒的に多いのは、それぞれの環境に適応したスペシャリストたちだ。アクネ菌(学名:Cutibacterium acnes)は、脂肪分の多い毛包に多く生息しており、皮膚が自然に分泌する皮脂を栄養分としながら、代謝の副産物として脂肪酸を生成する。
一方、表皮ブドウ球菌(学名:Staphylococcus epidermidis)は、皮膚の湿った部位で、より一般的に見かけられる細菌だ。
また、細菌ではなく真菌(カビ)の一種であるマラセチア菌は、ヒトの体表に最も多く存在する真菌だが、自ら脂肪酸を生成する能力を失っており、脂質を宿主から得なくては生きていけない。皮脂が多くある場所に固まっているのはそのためだ。
また、皮膚の上では、もっと大きな生物も暮らしている。ニキビダニ属(Demodex)に属する2種のダニは、人間の毛包(大半は顔の毛穴)の内側に、頭を突っ込んだ姿勢で生活しており、皮脂をエサとし、古い皮膚細胞を食べる。体長が0.2~0.3mm程度のこの微小なダニは、中年以降の大部分のヒトの皮膚に生息が認められるという。
皮膚にすむ微生物が、ヒトにもたらすメリットとは
最も広く認められている機能は「定着抵抗性(よそからやってくる菌による定着を阻む能力)」だ。ある場所で勢力を確立した集団は、空いている場所があればすかさず占有し、そこにある「栄養になるもの」を消費し尽くす。ゆえに、新参者の生物が使えるものはほとんど残らない。
皮膚にすむ細菌の一部は、さらにここから一歩踏み込んで、抗菌性の化合物を生成して、対抗するライバルを直接的に抑えている。2017年に『Science Translational Medicine』に掲載された研究では、健康な人の肌から採取した細菌の系統には、皮膚感染症の原因になることが多い黄色ブドウ球菌(学名:Staphylococcus aureus)の増殖を、直接的に妨げる能力があることが判明した。
また、皮膚に定住する微生物は、皮膚表面の化学的状態を一定に保つことにも役立っている。こうした微生物は、ヒトの皮脂や汗を栄養源として代謝することを通して、皮膚科医が「アシッドマントル(酸外套)」と呼ぶ、人体を守る仕組み作りに貢献している。これによって、人体の表面はおよそpH4~6の弱酸性に保たれるが、これは、体内よりも酸性に傾いた状態であり、多くの病原体が増殖しにくいpH値だ。


