マーケティング

2026.08.29 08:16

eBay出身の起業家、35のAIエージェントを駆使して「ひとりマーケティング代理店」を構築

Adobe Stock

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リナラ・ボジエワ(Linara Bozieva)は、35の特化型AIエージェントからなるチームを駆使し、急成長を遂げる「ひとりマーケティング代理店」を構築した。大手テック企業(ビッグテック)でシニアインダストリーアナリストを務めていた経歴を持つ彼女は、カリフォルニア州サンノゼを拠点とする「Ravenopus」の創業者だ。同社は中小企業やスタートアップを対象に、月額2万ドル(約319万円)から3万ドル(約479万円)のリテイナー契約(顧問料)でサービスを提供している。2024年5月に設立された同社は、自己資金で運営されており、初日から黒字化を達成していると彼女は話す。

ボジエワの取り組みは、急速に拡大するトレンドの一端を示している。給与計算代行サービス大手「Gusto」によると、2025年に新規に事業を立ち上げた起業家の60%が起業時にAIを利用しており、これは2年前の2倍の割合だ。

大手テック企業で15年のキャリアを積んだボジエワは、2年前に11年間勤めたeBayをレイオフされた後、フルサービスのマーケティング代理店を立ち上げて独立した。当初はフリーランスのチームメンバーに頼っていたが、そのモデルは非効率だと感じたという。彼女は、よりスムーズかつ迅速に仕事をこなすために新しいツールの実験を始め、徐々にAIエージェントを中心としたモデルを構築していった。「私たちはすべてのキャンペーンを運用し、あらゆる分析を行い、学習と反復を通じて成果を改善している」と彼女は語る。社名の「Ravenopus」は、ウェブサイトに記載されているように、「降り立ったいかなる環境も活用することを学ぶ」鳥であるワタリガラス(Raven)と、「その場で新しい問題を解決し、不可能な罠から脱出し、自らの環境を再編成する」ことで知られるタコ(Octopus)に由来している。

ボジエワは、このようなビジネスへのアプローチが、10億ドル(約1600億円)規模の「ひとり企業」の台頭を予兆していると考えている。「単一のオペレーターによるシステムスタックは、業界を問わず移植可能になりつつある。だからこそ、10億ドル(約1600億円)という軌道が単なる憧れではなく、仕組みとして実現可能なものになっているのだ」と彼女は話す。

彼女がこれをどのように実現しているのか、以下に紹介する。

AIで非効率を見つけ出す

ロンドンとチューリッヒでの生活を経て、2021年に家族とともに米国に移住したボジエワは、大手テック企業でキャリアをスタートさせた。eBayでは11年間、200カ国以上で使用される分析機能の構築や、当時208の市場で販売していた450万人の米国セラーを対象とした米国輸出プログラムのゴー・トゥ・マーケット(市場参入)戦略を主導した。eBayに勤務する前は、Googleロシアでシニアインダストリーアナリストとして3年間勤務。同拠点における分析担当の採用第1号として、分析機能をゼロから構築した。

彼女が発見したAI主導アプローチの大きな強みは、「順番待ち問題(キュー問題)」を解決できることだ。従来の代理店では、ストラテジストやデザイナーといった専門家の間で仕事が移行する際にボトルネックが生じ、プロジェクトの次の段階に進む前にチームがブリーフィング(説明会)を待つことになる。「期限に間に合わないこともある」と彼女は言う。一方、AIエージェントを活用すれば、顧客のペインポイント(悩みの種)を理解するための調査など、通常なら1カ月かかるような作業を1〜2日で終わらせることができる。さらに、AIエージェント同士はスイス製時計のように完璧に連携できるという。「クライアントにもよるが、通常は1週間ですべての準備が整う。あとは継続的な改善プロセスを進めるだけだ」と彼女は語る。

テクノロジーに対する考え方を変える

ボジエワは、自身のビジネスにおいて、一般的なSaaS(Software as a Service)のシステム構成を構築することを意図的に避けた。例えば、標準的なウェブサイト構築ツールを使用する代わりに、Next.jsを使ってウェブサイトをカスタムコーディングし、Vercelにデプロイした。「エージェントを動かすのと同じエンジニアリングの規律が、サイトの構築にも適用されている」と彼女は言う。

「市販されている中小企業向けのツールのほとんどは、チームを持つことから生じる調整問題を解決するために存在している」と彼女は指摘する。「『チーム』がエージェントのアーキテクチャである場合、そうしたツールの多くは不要になる。残るのは、銀行、決済、システムが稼働するインフラ、そして人間ではなくエージェントを管理するために構築された1つの調整レイヤーだけだ」

彼女の現在のシステム構成は、ビジネスバンキング用のMercury、決済および請求用のStripe、電子メールおよびドキュメント用のGoogle Workspace、コード管理およびデプロイ用のGitHubとVercel、データ用のSupabase、分析用のGA4とPostHogで構成されている。エージェント自体の調整にはMulticaを使用している。「コマンドラインから動作し、ここではすべてがその形で接続されている」と彼女は言う。

適切なシステムと構造を整備する ボジエワはビジネスを「指令(directives)」「オーケストレーション(orchestration)」「実行(execution)」の3つの組織レイヤーに整理した。彼女はまず、自分が必要とする役割と望ましいシステムアーキテクチャを把握した上で、Claudeを活用してシステム設計の実験を開始した。当初は、マーケティングの核となる機能をカバーする12のエージェントに依存していた。「新しいアイデアが生まれたり、クライアントのために新しい何かが必要になったりするたびに、エージェントを追加していった」と彼女は言う。

ボジエワは、自身のビジネスに適用しているのとまったく同じ3レイヤーの構造をクライアントの支援にも活用している。例えば、彼女が分析業務を担当している地域スーパーマーケットチェーンでは、エージェントを使って13の分析モジュール、19の自動ワークフロー、および100以上のテーブルからなるデータベースを作成した。

母親でもあるボジエワは、同様の構造を利用して「ファミリーオフィス」システムを構築し、AIエージェントに法律、財務、スタイリング、子どものイベントの手配などを担当させている。「エージェントが提案してくれるすべての戦略をとても気に入っている」と彼女は話す。

AIを使うべき時と避けるべき時を知る ボジエワは、より高度なツールを選択する前に、ChatGPT、Gemini、Claudeといった標準的なAIツールの使用から始めた。現在、彼女のコンピューターでは複数のAIシステムが稼働しているが、エージェントは明示的な承認なしに自律行動することはできない。彼女の試算によると、AI関連の月額コストは1000ドル(約16万円)未満に収まっている。

エージェントは多くのことを達成できるが、AIにはできないこともあると彼女は認識している。「AIには感情がない」と彼女は言う。「そのため、人々の感情に大きく依存するマーケティングキャンペーンの場合、AIは共感することも、そこから生じる感情を評価することもできない」。そのような時にこそ、彼女の出番となる。

人間をプロセスに関与させ続ける ボジエワは、ひとりビジネスを永遠に続けるつもりはない。「絶対に誰も雇いたくないというわけではない」と彼女は言う。「ビジネスがそれを必要とするときが来れば、喜んで人を雇いたい。自分1人で管理できるのは、せいぜい25社程度のクライアントだろうと考えている。信頼関係の構築や、そうしたソフトスキルが必要になるからだ。100社のクライアントを抱えるには、チームが必要になる。システムのためのストラテジストやスーパーバイザー、およびクライアントマネージャーとなる、私のような人材が必要だ」

10億ドル(約1600億円)規模の「ひとり企業」を構築することがますます可能になりつつあるとはいえ、それが彼女の究極のゴールではない。目標は、効率的に運営しながらクライアントに満足してもらい続けることだ。

forbes.com 原文

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