音波の力で物体を浮かび上がらせる「音響浮遊」という技術がある。空気以外の何ものにも触れずに物体を動かせるため、手で触れられないものの運搬などに使うことができる。一部では音響浮遊を応用した産業用や研究機関向けの製品が発売されているが、筑波大学は、これまでの方式と異なる、応用範囲がさらに広がる画期的な音響浮遊技術を確立した。
現在普及している音響浮遊の方式は、2つの超音波を発して、それらが干渉してできる音圧の谷間に微小な物体を挟み込むというものだ。しかしそれには、音源から離れすぎると逆に音波が物体を弾き出してしまうという欠点がある。また、2つの音源を正確にコントロールするために、安定的に物体の移動を行うには閉じた空間が必要になる。
これに対して筑波大学の方式は、1本の細長い超音波ビームを下から物体に当て、物体を音圧の高い領域に閉じ込めるというものだ。それなら音源から離れても物体が弾かれることがなく、特別な閉じた空間を用意する必要もない。
実験では、256個の超音波素子を並べた超音波フェーズドアレイ(個々の素子から出る音波の位相をコントロールして狙った音場を作る装置)を用い、片側から上向きに音波ビームを照射することで、直径1.5ミリメートルの発泡ポリスチレンの球体を音源から最大40センチメートル離れた位置でも保持できることを確認した。これは従来の片側照射方式の6倍近い距離だ。
また、ビームの向きや広がりを変えることで浮遊させた物体を前後左右上下と3次元的に動かすこともできた。ビームを2本に分けると、複数の物体を同時に浮遊させることも可能だ。浮かせる物体は球形に限らず、茶葉やエアロゲルの断片などの不規則な形状のものも空中に保持でき、障害物の先でも浮遊が可能であることを実証した。
この方式は理論的には以前から予測されていたものなのだが、筑波大学が初めて実証したということだ。これを使えば、実験の自動化や立体ディスプレイなどへの応用が期待されるという。



