Forbes JAPANは今年、J-CATを共催に迎え、新たなアワード「Destinations of the Year」を創設。工芸、食、自然、風習——各地で新たな観光価値を創造する30の事業者を選出、審査項目に沿って、特に象徴的な5つの取り組みを賞としてピックアップした。
文化の進化性部門「FUTURE FORWARD賞」を受賞したのは、流域のがっこう。人間も自然の一部であると思い出させてくれる、屋久島での体験だ。独自の“菌築”と地域の言葉で、自然と共生する思想を伝える。
あるときは海水から塩を炊き、あるときは田植えをして、汗をかいたら川で遊び、焚き火の小枝を拾いに山に入る。山から海への水の流れが生活を潤していることを体感し、その仕組みを座学で理解する。屋久島で“流域”に触れる体験を提供する「流域のがっこう」のプログラムだ。
管理運営するのは、モスガイドクラブ代表の今村祐樹。屋久島に魅了されて、2002年に大阪から移住。縄文杉や白谷雲水峡といった王道ルートのガイドをするなかで、「時間に追われるツアーばかりで、日々異なる島の魅力や、心動かされる瞬間を味わえない」と、独自のかたちを模索。山をおりた先もガイドするイメージで、宿を構え、季節の料理を提供し、より屋久島の全体性を伝えるプログラムを開発してきた。
そのなかで常に、屋久島の本質的な価値を社会と接続することも考えてきた。島を訪れる人には、疲れて癒しを求める人も多い。「まるで現代社会の“延命の場所”のようになっている。それよりも、疲れた人を再生産しない社会をつくれないだろうか」。その発想が、企業向けプログラムにつながった。
「例えば、樹齢千年の木と数十年の木は何が違うと思いますか? 長生きする木は関係性が豊かなんです。それは企業にも言えることですよね」と今村。多様性そのものの自然のなかで、こうした問いや気づきを共有することが組織のパーパスの深化やチームビルディングに合っているという。
逆転の発想を体験できる場所へ
モスの長年のパートナーのひとりに、再生可能エネルギーを開発するスタートアップ、自然電力代表の磯野謙がいる。もともとは個人で訪れ、モスの拡張時に出資者として参画し、のちに企業研修も体験。20年、拠点のリノベーションの際に建築家の小野司を紹介した。
時はコロナ禍の始まり。緊急事態宣言で滞在が伸びるなか、連日小野、磯野のほか島に居合わせたメンバーで「これからの社会に屋久島をどう生かすか」議論を重ねた。



