AI

2026.08.28 10:13

AI時代の「陳腐化恐怖」にどう向き合うか 取締役会とリーダーの処方箋

Adobe Stock

Adobe Stock

AIの導入は、世界の何百万もの職務におけるスキル要件を急速に変化させている。労働者とビジネスリーダーが対応を急ぐなか、取締役会、上級幹部、従業員は明確な懸念を共有している。スキルセットを速やかに変えなければならない、ということだ。スキルが陳腐化することへの不安(FOBO:Fear of Becoming Obsolete)は、企業レベルでも個人レベルでも現実のものとなっている。

どのスキルが陳腐化し得るのか

WTWのシャイ・ガヌ(Shai Ganu)は最近、Directors & Boardsで、米労働統計局のデータベースに基づく920の職業プロファイルと5万件の職務を代表するタスクと活動を分析したWTWの調査について報告した。研究者らは、AIとロボティクスによる自動化の可能性について各タスクを評価し、次のことを明らかにした。

  • オペレーション、管理、事務機能など、高度に構造化された職務におけるタスクの最大72%が自動化され得る。これは、反復的でルールに基づく認知的作業を置き換える大きな可能性を示している。
  • 産業現場やフロントラインの職務における反復可能なタスクの最大75%が自動化され得る。これは、反復的でルールに基づく身体的作業を置き換える大きな可能性を示している。
  • AIは、専門職や高度な判断を要する職務におけるタスクの最大35%を補完し、従業員がより良い意思決定を行い、成果を高めることを支援し得る。

さらに、AIとロボティクスは、個々のタスクにAIを単純に追加するのではなく、ワークフローと仕事の構造を再設計することで、今日の仕事の半分以上を自動化し得る。多くの新たなスキルが生まれ、多くの既存スキルが引き続き重要であり続ける一方で、長年不可欠とされてきた一部のスキルは陳腐化する可能性がある。

陳腐化への不安(FOBO)

WTWのジル・ハヴリー(Jill Havely)は最近、目まぐるしいAIの発展のなかで、陳腐化への不安が従業員に現実の不安を生み出していると述べた。急速な自動化、組織の準備状況のばらつき、そしてAIが仕事に与える影響をめぐる議論がなお形成途上であることにより、従業員は不安を抱き、どのように適応すべきかが見えにくくなっている。世界経済フォーラムの「2025 Future of Jobs Report」によれば、従業員は自身の既存スキルセットの39%が2030年までに変容するか、陳腐化すると見込んでいる。WTWの「2026 Global EX Market Study」では、次のことが明らかになった。

  • 自社がAI関連の変化を効果的に管理していると考える従業員は約50%にとどまり、自社におけるAIの可能性に期待している従業員もほぼ同程度にすぎない。
  • 雇用主の58%は、今後3年でAIが従業員体験の管理方法を根本的に変えると予想している(10年以内では91%)。しかし、その変化に対応する準備ができていると感じているリーダーは約半数にとどまる。
  • 高インパクトの従業員体験を提供する組織は、利払い・税・減価償却前利益(EBITDA)が23%増加し、前年比売上高が8%増加するなど、一貫して同業他社を上回っている。

取締役会はFOBOリスクをどう低減できるか

取締役会が問うべき最も重要な問いは、次のように実務的なものだ。

  • どの職務が最も自動化されやすく、どの職務でより深い、あるいはより幅広い人間の判断が必要になるのか。
  • AIによって、どのような新製品や新サービスが実現可能になったのか。
  • 今後3〜5年で、AIは組織の人材ピラミッドの形をどのように変えるのか。
  • 定型業務の自動化が進む場合、キャリア初期の人材育成はどうなるのか。
  • 取締役会は、経営陣のAIに関する前提について独立した見解を持っているのか。それとも主に経営陣が提示する見方を受け取っているだけなのか。
  • リーダーシップ開発と後継者計画は、AIリテラシーと変革経験を織り込む形で更新されているのか。

リーダーはFOBOをどう低減できるか

FOBOは続く可能性が高いものの、リーダーがそれを和らげ、軽減するために取れる手段はある。

  1. 明確なビジョンを打ち立て、頻繁に伝える。リーダーは、AIが事業と労働力をどのように変えるのかを明確かつ一貫して伝えることで、組織の基調をつくる。明確に定義されたビジョンは、組織がどこへ向かっているのか、そしてなぜそうするのかを従業員が理解するために必要な文脈を提供する。
  2. どのスキルが必要になるのか、AIがどのような利益をもたらすのかを明確にする。従業員は、変化が自分にどう影響するのかを理解したいと考えている。有能なリーダーは、AI変革を個人の成長、効率化、スキル構築の機会と結びつける。人間が今後もどのように独自の貢献を続けるのかを明確に示し、AIが従業員の価値を置き換えるのではなく高めるものであることを理解できるよう支援することで、従業員の自信を高める。
  3. AIの機会を、単なるコスト削減ではなく、収益成長と戦略的差別化を軸に位置づける。BCGヘンダーソン研究所を含む多くの調査は、AIが置き換えるよりも多くの仕事を再形成すると予測している。マイクロソフトの「2026 Work Trend Index Annual Report」は、一部の仕事はなくなる一方で、新たな仕事が生まれ、ほかの仕事は変化すると指摘した。LinkedInの「2026 Labor Report」によれば、過去2年間で130万件を超えるAI関連の仕事が創出された。現在では、AIを単なるコスト削減ではなく、成長の推進力として位置づけるCEOが増えている。
  4. 注意深く耳を傾け、データを使って従業員のニーズを理解する。従業員のニーズを理解することは、AI導入を効果的に進めるうえで不可欠だ。従業員の嗜好、感情、行動に関する信頼できるデータは、組織が有効なプログラムを開発し、コミュニケーションを調整し、懸念が進展の障壁になる前に対処する助けとなる。また、仕事、報酬、キャリア、AIを活用した変革に関する意思決定について、リーダーに明確な道しるべを与える。
  5. マネジャーの能力を高める。マイクロソフトの調査では、AI利用者のうち、リーダーシップ層がAIについて明確かつ一貫して足並みをそろえていると答えたのは26%にすぎなかった。WTWの「2026 Global EX Market Study」では、マネジャーが戦略を日々の体験に落とし込むうえで極めて重要な役割を担う一方、そのための余力、ツール、自信が限られているケースが多いことが示された。新しい働き方に向けてマネジャーの能力強化に着手している組織は約4分の1にとどまる。マネジャーには、自身の仕事をより効率化し、AIを活用したワークフローのなかで人とエージェントの双方を率いるためのAIスキルが必要だ。AI、コーチング、コミュニケーション、不確実性のなかでのリーダーシップに関するマネジャー育成は、高い投資対効果をもたらす。
  6. AI導入に従業員を巻き込み、カルチャーを優先する。マイクロソフトは、カルチャー、マネジャーの支援、人材施策がAI導入に強く影響するとしている。BCGは、スキル向上とリスキリングをめぐって組織の足並みをそろえ、キャリアの新たな道筋を形づくり、人間とAIの協働を新たなレベルへ引き上げることで、イノベーションを加速することを重視している。WTWの調査では、従業員は自らが創出に関わったものを支持することが示されており、リーダーは仕事の再設計に従業員を参加させるべきだ。従業員がアイデアを試し、解決策を洗練させ、フィードバックを共有できると、当事者意識と勢いが生まれる。

リーダーは、従業員体験に投資し、必要な専門能力開発を提供し、新たなスキルを可視化して達成可能なものにし、何がなぜ変わるのかについて明確なメッセージを発することで、不安を和らげ、FOBOを軽減できる。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事