成長に立ちはだかる課題
「米国のロボティクス産業は全体として、先進ロボットを米国内でどう作るかを考えなければならなくなりました」とリプハートは語った。
それは簡単ではないし、これからも簡単にはならない。理由はいくつもある。製造能力、原材料の入手しやすさ、そしてエコシステムの密度である。要するに、米国がこの指数で低いスコアにとどまった理由が、そのまま壁になる。
とはいえ、不可能というわけでもない。
米国は最良のAIを持っており、そこへの再投資も続けている。ロボットに学習させるデータを人手で集めるFigure(フィギュア)の10億ドル(約1590億円)規模の賭けはその1例だ。だが、オープンウェイトのAIが進むにつれて、AIモデルの優位はどんどん失われていく。大手の独自モデルからわずか数カ月遅れで追いついてきているように見える。「各国、とくに中国は、フィジカルAI向けの先進モデルもオープンウェイトで公開しています」とリプハートは付け加える。「もちろんそれは、競争条件を再び横並びに戻します」。
新しいAIモデルを作ることより難しいのは、ロボットに必要な金属やレアアース、そして高度な機械部品を実際に用意することだ。
ロボットの筋肉にあたるアクチュエーターは、ヒューマノイドの部品表の40〜60%を占める。半導体は約10%で、その大半は直径200ミリのウェハーを使う28〜90ナノメートル世代という成熟した製品であり、不足に困っている人はほとんどいない。足りないのは、波動歯車減速機(ハーモニックドライブ)とサイクロイド減速機、遊星ローラーねじ、フレームレストルクモーター、精密ベアリング、そしてレアアース磁石である。とりわけ磁石が問題になる。中国が世界の焼結ネオジム永久磁石の94%を作り、レアアース精錬の91%を握っているからだ(米国にも代替となる供給元はあるが、そのすべてが本格的な量産体制に達しているわけではない)。
OpenMindは、サプライチェーン全体の中で最も厳しいボトルネックは磁石だとしている。半導体よりも細く、電池よりはるかに細い。電池はそもそも制約になっていないことがわかった。
同盟国にも例外はない
根本的な難しさは、FCCの決定が国を問わず適用される点にある。
狙いはたしかに中国だ。現在出荷されているヒューマノイドロボットの97%は中国製だからである。しかし、同盟国にも例外は設けられていない。FCCは「外国製」の線引きに、バイ・アメリカン法の「国内最終製品」基準を用いる。2028年までは部品コストの65%、2029年からは75%を米国内調達でまかなわなければならない。つまり、この指数で2位に入った日本も、米国のロボットメーカーの問題を解決してはくれない。
報告書によれば、日本のハーモニック・ドライブ・システムズは波動歯車減速機で世界シェアの71〜85%を握ると推定される。ナブテスコは大型産業用ロボットの関節でおよそ60%を占める。つまり、地球上にあるヒューマノイドロボットの関節のかなりの部分が、日本の1社に依存している。だが、日本製の部品も中国製と同じで、65%の米国内調達分には算入されない。
とはいえ、垂直統合を一気に進めている米国内メーカーもある。ヒューマノイドロボット「Neo」を作る1X(ワンエックス)がそうだ。1Xはアクチュエーターを含め、ほぼすべてを自社で内製している。そのため、FCCの決定による打撃は小さくなる。
FigureやApptronik(アプトロニック)といったメーカーも、可能な範囲で垂直統合を進めている。


