暮らし

2026.08.29 16:00

ビジネス書より効果的、頭脳明晰な人が週末に「小説を愛読」する理由

stock.adobe.com

ノンフィクションはこうした不快感を和らげるために作られている。主張を提示し、それを裏付けて締めくくる。一方、フィクションはその不快感を長引かせるように作られている。登場人物はずっと後になるまで理解できない行動を取り、最後までその意味がわからないことさえある。優れた小説の多くは何を結論とすべきなのかを読者に教えないまま終わる。小説を読むということは、行動の理由をまだ説明できない人物に興味を持ち続け、結論を出さないまま長い時間を過ごすということだ。

advertisement

これは華やかさのないスキルだが、優れた思考の核心に近い。複雑な状況で下される誤った判断の多くは思考のフレームワークが欠如しているからではなく、早すぎる段階でストーリーを固めてしまうことに起因している。

「実用性」のための没頭では効果なし

だからこそ、フィクションを役立てようとした瞬間にその効果は失われてしまう。小説から洞察を得ようとしたり、単に「読んだ」という事実を主な目的として読んだりすると、物語の世界に没入しているときとは全く異なる心理状態になる。

研究者たちは、その有益な状態を「トランスポーテーション」と表現している。つまり、自分が今いる部屋を離れて別の場所にいるように感じることだ。学術誌『Advances in Experimental Social Psychology』に2024年に掲載されたレビューでは、この没入状態がいかに徹底的に研究されてきたかが示されている。この状態は脆い。文章にハイライトの線を引いたり、読書量の目標を設定したり、あるいは「これは後で役に立ちそうだ」と頭の片隅に留めたりすればその状態は失われる。

advertisement

同じようなことは「認知欲求」、つまり難しい思考そのものを楽しむ傾向についての研究にも見られる。学術誌『Collabra : Psychology』に2024年に掲載されたメタ分析レビューでは、この特性が実際のウェルビーイング向上(不安やうつの軽減、満足度の向上)と関連付けられており、そこでも同じ区別が指摘されている。効果をもたらしているように見えるのは思考の量ではなく、考えることそのものを楽しむことだ。

したがって、明確な目的がないことはこの趣味の欠点ではない。この趣味の前提条件だ。

実際に裏付けられていること

短編小説を読むことで確実に共感力が高まるという考えは個々の研究で再現することが難しく、それを確立された事実のように語る人がいれば懐疑的になるべきだ。現時点で最も明確な答えを示しているのは、学術誌『Journal of Experimental Psychology : General』に2024年に掲載されたメタ分析だ。その効果は確かに存在するが大きくなく、全般的な認知機能の向上というよりは共感や他者の視点に立つ能力に特化したものであることが示されている。

また、だからといって小説を読む人が人間として優れているという意味ではないことも指摘しておくべきだ。他人の考えを理解することは能力であって美徳ではなく、その能力は良い目的にも悪い目的にも使われる。

とはいえ、簡単には答えの出ない人間や状況についてより明晰に考えられるようになりたいのなら、自己改善とは最もかけ離れたように見えるこの趣味に週末を費やすことは理にかなっている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事