石油供給の減少と価格の高騰が長期化すれば、こうした傾向は一層強まるだろう。海運業や航空業では、大規模に代替できる現実的な手段は限られているが、旅客航空の需要は価格変動に敏感だ。道路輸送部門では、中国製のEVとバッテリーが供給過剰に陥っていることから、多くの国でEVの導入が進むだろう。ただし、一部地域では充電用の社会基盤の整備が課題となる。化学製品製造での石油から石炭への燃料転換は既に一部の市場で進められており、今後も続く可能性がある。ホルムズ海峡の再開は市場の不安要因の1つを取り除くことになるが、現在のディーゼル燃料不足は原油供給だけでなく在庫の問題でもあり、高止まりした原油価格の影響が向こう数カ月にわたり貨物輸送や産業に波及し続ける可能性がある。
過去のエネルギー危機から学ぶ教訓
歴史は、持続的な供給制約と恒久的な需要破壊との間には強い関連性があることを示している。これはあらゆる産業で発生し、「材料の代替」と呼ばれることもある。エネルギー産業における代表的な例は、1973年と79年の石油危機によって引き起こされた構造的な需要破壊であり、燃費基準の導入や石油火力発電の置き換えなどを通じて恒久的な変化がもたらされた。最近では、2022年の欧州ガス危機も同様に構造的な変化をもたらし、同地域では輸入依存からの脱却が進んだ。
イランに対する攻撃が地域紛争に発展したことで、同地域のエネルギー輸送の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈した。紛争が長引くほど、恒久的な需要破壊の可能性は高まる。イランが支援するイエメンの親イラン武装組織フーシ派がホルムズ海峡の代替輸送路である紅海のバブ・エル・マンデブ海峡を攻撃していることで状況は悪化しており、早期の正常化は遠のいている。
ここで、危機が収束に向かわず、原油価格の高止まりが長期化した場合にもたらされる影響について解説しよう。短期的な価格上昇は、自動車や航空機の利用削減といった一時的な行動変化や、石油化学製品などの需要の先送りといった現象をもたらすに過ぎない。だが、原油価格の上昇が持続すれば、構造的かつ恒久的な変化が生じることになる。
10月に発行されるDNVの報告書「エネルギー転換見通し」では、将来の石油需給の最も可能性の高い展開を定量化し予測するという困難な課題に取り組んでいる。同書の執筆時点では、中東の中長期にわたる危機を想定している。危機がさらに長期化した場合や恒久的な需要破壊の可能性についても考察する。
本稿では、冒頭で示した一般的な認識に異議を唱えてきた。すべての国や組織、企業、個人は、ホルムズ海峡を巡る危機が長期化する可能性と、恒久的な石油需要破壊の可能性の高まりを十分に考慮に入れるべきだ。


