ウクライナ防衛軍(以下「ウクライナ軍」)は、米スペースXの小型衛星通信端末「Starlink Mini(スターリンク・ミニ)」を搭載したFPV(一人称視点)ドローン(無人機)を気球で運び、ウクライナ南部のロシア占領地域の奥深くに投入し始めたもようだ。ロシアの軍事ブロガー「スペツナズの大天使(アルハンゲル・スペツナーザ)」が8月12日、テレグラムへの投稿で報告した。それによれば、気球で運ばれたFPVドローンは、ザポリージャ州のメリトポリ方面へ向かう幹線道路を走行するロシアの兵站車両を攻撃しているという。
この新戦術はロシア軍の不意を突くものだった。というのも、FPVドローンはこれまで主に前線付近に集中配備され、そこで大量に使用されてきたからである。この方式は、安価な攻撃システムであるFPV攻撃ドローンの到達範囲を拡大することで、ロシア軍の兵站網に対するウクライナの中距離打撃作戦を拡大する新たな手段になる可能性がある。
気球とスターリンクを利用してFPVドローンの行動範囲を拡大
ウクライナは4カ月ほど前から、前線へ物資を補給するロシアの車両を重点的に狙う中距離打撃作戦を展開してきた。攻撃はとりわけウクライナ南部で多く行われており、マリウポリやメリトポリから前線へ物資を運搬するロシアの車両をドローンでたたいている。
これらの攻撃の多くは、ロシア支配下の地域に100km以上深く入り込んで行われるため、ウクライナ軍はAI(人工知能)を活用する中型の固定翼ドローン「Hornet(ホーネット)」を頼りにしてきた。ウクライナ側はそれらのドローンから送られてきた映像を編集した動画をいくつか公開しており、そこには、ホーネットが幹線道路の上空を巡回し、ロシアの兵站車両を識別して破壊する様子が映っている。
Azov returns to Mariupol. For now, through reconnaissance-strike systems.
— First Corps Azov of the National Guard of Ukraine (@azov_media) May 8, 2026
Pilots of First Corps Azov of the National Guard of Ukraine patrol roads up to 160 km deep behind the line of contact.
In the cameras of reconnaissance-strike drones: Mariupol and enemy military targets.… pic.twitter.com/9QcTBiZr6I
とはいえ、ウクライナ軍はロシア軍の補給作戦を完全に阻止することはできていない。ロシア軍は軍用車両だけでなく民間車両も含めて大量の車両を利用できるため、ウクライナ軍による攻撃が続くなかでも、引き続き相当量の物資を前線まで送り届けることができているとみられる。一方、ホーネットの投入数は減っているらしく、スペツナズの大天使は在庫不足の可能性に言及している。ロシア軍は電子戦システムの配備や機動射撃班の配置、兵站車両の武装護衛など、追加の対抗手段も講じている。



