AIは、テキストボックスの中だけでは終わらない
さらに興味深いのは、Gensparkがこの構想をソフトウェアの中だけに閉じていない点だ。エリック・ジンは「AI recording is not the endpoint, it's the starting point of our work(AIによる録音・記録は終着点ではなく、私たちの仕事の出発点にすぎない)」と述べた。録音は保存のためではなく、その後の仕事を走らせる入口だという発想である。ここで重要なのはハードウェアの仕様ではなく、AIサービスが扱う文脈の範囲を、画面の中から現実世界へ広げようとしていることだ。
ウェン・サンもまた、この方向性を「最新モデルへのアクセスだけでなく、物理世界へのアクセスも解放する」と表現している。会議室の会話、移動中のメモ、対面の打ち合わせ。そうしたまだデジタル化されていない仕事の前提までAIの側に持たせることで、仕事の流れをより長く、より自然につなげようとしている。ここには、AIサービスの次の競争がどこにあるのかがよく表れている。より賢い答えだけでなく、より広い文脈を持ち、より長い仕事の連なりに関与できるかどうかである。
「AIを一部の熟練者の道具のままにしない」
Genspark創業者たちの発言で一貫しているのは、AIを一部の熟練者の道具のままにしないという姿勢だ。ウェン・サンは、「世界はツール中心であるべきではない。人間中心であるべきだ」と語る。ユーザーはモデルの性能表を見比べたいわけではない。やりたいのは、自分の仕事を前進させることだ。会議を準備し、返事を送り、企画を練り、共有し、次の判断につなげる。その流れの中で、AIがどれだけ自然に寄り添えるかが、次のサービスの価値になる。
最後に、彼らの狙いを最も端的に表しているのは、ウェン・サンのこの一言かもしれない。「Googleが使える人なら、Gensparkも使えるべきだ」。AIの勝負は、もはやモデルの性能だけでは決まらない。人が迷わず使え、文脈を忘れず、仕事を前に進めるところまで引き受けられるか。Genspark創業者たちが描く「次のAIサービス」の条件は、そこにある。


