━━経営者像についてお聞きします。創業から11年を迎えましたが、経営者として大切にしている価値観は何でしょうか。
吉田:私たちが提供するサービスが生活のインフラとして社会から長く必要とされ続けること、そしてライフスタイルのパートナーになることを目指しています。その上で、大切にしている価値観がふたつあります。
ひとつ目は、自己変革をやり続けられるか。これは変化と挑戦を止めるな、ということでもあります。レシピ動画メディアもリテールメディアも、AIを活用したプロダクトも、私たちは常にどの競合よりも早く参入し、過去の自分たちの成功体験を自ら壊して変革してきました。自分たちを変革し続けられる会社であり続けることが、持続的な成長には不可欠です。
ふたつ目は、顧客起点での長期価値です。私の好きな本にピーター・ティールの『ゼロ・トゥ・ワン』という著書があるのですが、その中に「ラストムーバー・アドバンテージ(最後の参入者になれ)」という言葉が出てきます。
ネット業界ではよく「ファーストムーバー(先行者)であれ」と言われますが、本当に大切なのは最終的に市場を取り切り、後発が参入できないほどの決定的な状況を作ることです。そのためには、顧客にとって長期的に変わらない本質的な価値を、最初に泥臭く作り上げなければなりません。
エブリーの事業で言えば、AI時代においてアルゴリズム自体は参入障壁になり得ません。本当の差別化になるのは、自分たちしか持っていない食生活行動ビッグデータ、そして全国のスーパーと構築したリアルなインフラです。短期的な利益を追うのではなく、顧客起点での長期的な価値作りにこだわり抜くことを徹底しています。
私の前職のグリーも、もともとはPC向けのSNSからスタートしましたが、競合がひしめく中でどこよりも早くガラケー(モバイル)化を推し進め、さらにそのビジネスが好調な最中に、スマートフォンへのシフトを他社よりも早く決断しました。自らの成功領域に固執せず、ユーザーが求める場所へ自分たちを変革させていく姿を間近で見てきたことが原体験になっています。
━━エブリーの社内では、そうした「自己変革」や「長期的な挑戦」を重視するカルチャーは浸透していますか。
吉田:エブリーに集まってくれている仲間は、挑戦することが本当に好きなメンバーばかりです。例えば、リテールメディアの取り組みも、私たちが最初の一歩を踏み出したのは18年頃でした。そこから全国のスーパーにサイネージを導入していただき、日本最大規模のネットワークになるまで7〜8年という歳月がかかっています。成果が出るまでに数年かかるようなプロジェクトであっても、5年後、10年後の社会価値を信じて情熱を燃やし続けられるメンバーが多いことは当社の誇りですね。
社内には、直属の上司だけでなく、斜め上の役職者と1対1で定期的に対話する「サシマネ」というメンタリング制度もあります。事業で行き詰まったり、迷ったりしたときに、多角的な視点から知見やマインドをサポートする仕組みを整えており、組織全体で困難を乗り越える文化ができています。
━━経営者として、自身のパーソナリティは慎重で堅実なタイプ、大胆に挑戦するタイプのどちらでしょうか。
吉田:基本的には大きな未来に向かって大胆にチャレンジし続けたいタイプです。変化を起こす挑戦を、ひとりではなく多くの仲間とともに楽しむことこそが、私の人生の最大の喜びでもあります。
エンジニア出身ということもあり、プライベートを含めて現在はAIの最新技術にどっぷり浸かっています。組織や業務オペレーションをAI前提で作り直すプロジェクトチームを走らせていて、私自身が最前線で一緒になって動いています。


