━━3点目の成長戦略は拡張領域として「小売向けCRMシステム(小売アプリ)」と「デリッシュAI(レシピ提案AI機能)」を挙げています。これらは次の成長の柱にしていく構想でしょうか。
吉田: はい。どちらもすでにローンチ済みですが、今後さらに強化していく重要領域となります。
まず「小売向けCRMシステム(小売アプリ)」ですが、これは顧客名義で提供する公式アプリの開発・運用をご支援するサービスです。アプリ内に各スーパーのポイントカード機能やデジタルクーポン機能を組み込むことで、小売におけるロイヤル顧客の囲い込みや接点作りを支援します。
このシステムを導入していただくことで、店舗に対する人流データや購買データがさらに自社基盤へ拡張されることになります。当社の強みであるデータのネットワークが広がり、さらにレバレッジが利くようになる。将来的にはこの小売アプリ自体を、メーカー向けの新たなリテールメディア広告枠として販売し、収益を拡大していくことも計画しています。
もうひとつの「デリッシュAI」は、生活者(toC)向けのプロダクトです。従来のレシピメディアから、一歩進んだ「AI料理アシスタント」へとプロダクトの方向性を進化させています。
目指しているのは、ひとり1台のスマホの中に、専属の料理専門家がいる世界です。料理をする方の本当の悩みは、レシピの手順そのものよりも「今日何を作ればいいか分からない」という献立のアイデア出しにあります。「今日は暑いからさっぱりしたものが食べたい」「子供の誕生日だから喜ぶメニューを」といった大まかな相談を自然な対話で投げるだけで、メニューの決定から手順、余った食材の保存方法までアシスタントがサポートします。
━━それによってより深いデータを収集することができるようになると。
吉田:私たちの「食生活行動ビッグデータ」に、料理を決める前のインサイトデータ(意思決定の動機)が加わることになります。例えば、「ハンバーグを作る」という行動ひとつをとっても、「ひき肉が余っていたから作った家庭」と「子供のご褒美のために作った家庭」とでは、最適なマーケティングアプローチは全く異なります。こうしたデータが入ってくることは、メーカーのマーケティング支援において非常に強力な武器になります。
また、「デリッシュAI」は有料会員向けに提供しているので、利便性が高まることでプレミアム会員数の増加と、サブスクリプション収益の拡大に寄与すると期待しています。データ領域の種類と量を増やすことが、プラットフォームの拡大とソリューションの高度化に直結しますので、この軸を力強く推進していきます。
━━27年6月期の期初予想は売上高が前年比16.2%増と堅実な一方、営業利益は同63.3%増の5.3億円と大幅増益を計画しています。足元の手ごたえと市場環境をどう捉えていますか。
吉田: 私たちがクライアント企業とともに積み上げてきた実績は揺るぎないものになっており、顧客単価の上昇も着実に進んでいますので、確固たる手ごたえを感じています。市場環境を見ても、クライアントの多くが「テレビCM 7割、デジタル広告 3割」といった従来の予算配分から、一刻も早くデジタルシフトを進めたいと考えています。今の20代・30代の若い世代はテレビを持たない、見ない人の割合が多く、従来のテレビ広告だけでは認知が全く届かなくなっています。クライアントはそこに強い危機感を持っているため、追い風の市況感は今後も変わらないでしょう。
本来、マーケティング活動というのは「人がいる場所」に向けて予算をかけるべきです。しかし現実には、生活者のメディア接触時間の過半がデジタルに移行しているにもかかわらず、メーカーの予算は半分もデジタルに行っていません。このギャップこそが、クライアントの経営課題であり、私たちにとっての巨大な勝機なのです。


