本稿は、2026 Future of Memory and Storage(FMS)カンファレンスに関する連載記事の第1弾である。今回は、FMSやその他の最新情報に基づき、ストレージおよびメモリ技術の全体的な市場動向について考察する。当然ながら、AIがあらゆるタイプのストレージおよびメモリ技術の需要を牽引しており、これによりこれらの重要なコンピューティングコンポーネントが不足し、価格が高騰している。
まずは、コンピューティングアプリケーションの一般的なワーキングメモリであるDRAMの市場から見ていく。DRAMは、さまざまなDDR構成のほか、GPUなど特定のドメインに特化したメモリ用途で普及している高性能な高帯域幅メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)パッケージでも使用されている。さまざまなアナリストによる市場プレゼンテーションを見てみよう。
最初に、Trendforce(トレンドフォース)のアヴリル・ウー(Avril Wu)氏の見解を紹介する。ウー氏は、AIおよびサーバー向けのDRAM消費は、もはやHBMやDDR5だけに留まらず、LPDDRやグラフィックス用DRAMにまで拡大していると指摘した。Trendforceは、2028年までのサーバー用DRAMとHBMの累積年間ビット成長率(CAGR:年平均成長率)が全体で37.4%に達すると予測しており、2028年のビット需要の48%をサーバー用DRAMが供給し、次いでHBMが14%、その他のDRAMが38%を占めると見込んでいる。
Trendforceによると、生成AIやエージェンティック(自律エージェント型)ワークロードの規模拡大が続く中、2025年のHBM出荷予測は何度も上方修正され、需要減退の兆しは見られないという。同社は、2027年に向けた受注交渉がすでに進行中であり、出荷の伸びは前年比(YoY)で約60%を維持すると予想している。2028年には需要がやや落ち着くと予想されるものの、次世代HBMの採用と先進パッケージング技術により、2028年も約42.9%の成長が見込まれるという。
下の図は、米国の主要なハイパースケール・データセンター企業数社による2027年までの独自チッププロジェクトに関するTrendforceのまとめを示している。
Trendforceは、スマートフォンなどのモバイル用途と比較して、サーバー関連用途向けのNAND供給シェアが増加していると予測している。サーバー向けSSDの総需要における、サーバー関連のビットCAGRは2028年まで47.5%で推移し、2028年までに全体の約49%を占めると予測されている。また同社は、DRAMおよびNANDフラッシュを製造する主要メーカーが、NANDフラッシュの生産よりもHBMなどの高利益率なDRAM製品の生産拡大に注力しているため、NANDベースのストレージ不足が長期化することになると指摘した。
Trendforceの予測によれば、DRAMの需給バランスは2028年まで不均衡な状態が続く。2028年にはDRAMの供給が需要を2%上回り、NANDフラッシュの供給が需要を4%上回る見込みである。
Yole(ヨール)のウェン・リュー(Wen Liu)氏は、2031年までNANDのビット出荷量が増加し続けると予想しており、2025年から2031年までのCAGRは17%に達し、NANDのギガバイト単価($/GB)は2027年にピークを迎え、2028年末から下落するものの、2031年の価格は2025年よりも高くなると予測している。2025年から2031年にかけてのビット成長の主な要因はデータセンター需要であり、そのCAGRは29%であった。同社は、クライアントPCやリムーバブルストレージ向けにおいて、TLCフラッシュと比較してQLCの大幅な成長を予測しているが、エンタープライズSSDやモバイル向けの成長ははるかに緩やかであると見ている。Trendforceや多くのFMS基調講演と同様に、Yoleも、より多くのNANDベースのストレージ/メモリ階層が使用されるようになるにつれて、データセンター向けのNAND製品でカスタマイズが進んでいると考えている。
同じくYoleのシモーネ・ベルトッツィ(Simone Bertolazzi)氏はDRAMに焦点を当てた。同氏は、2026年のDRAM全体の売上高が2025年比で227%増加し、ギガバイトあたりの平均販売価格($/GB)は175%上昇すると予測した。また、HBM市場の売上高は2026年に2025年比で70%成長し、ギガバイト単価($/GB)は11%上昇すると予測している。2025年のHBM総売上高の59%をSKハイニックス(SK hynix)が占めた。HBM出荷の大半(61%)は、2026年と2027年にエヌビディア(Nvidia)向けになると予測されている。
IBMのジョン・ユン(Jung Yoon)氏は、AIインフラの「スーパーサイクル」について語った。同氏によると、現在および将来のAIアプリケーションをサポートするためのAI最適化データセンターの建設に、2026年には5000億ドル(約79兆5000億円)以上が投資されるという。また、この投資は2030年までに7兆ドル(約1110兆円)に達する可能性があるという予測を指摘した。同氏は、HBMはダイサイズが大きく、TSV(シリコン貫通電極)積層の歩留まりの関係上、標準的なDDRと比較して3〜4倍のウェハーを必要とするものの、サプライヤーにとってHBMの利益率は標準的なDDR5に比べて5〜10倍高いため、HBMの製造が優先されていると指摘した。
同氏は、DDR5サーバー用DRAM、およびエンタープライズ向けNAND/SSDの動向と予測を示す2つのチャートを共有した。筆者は、エンタープライズ向けNAND/SSDが2025年第4四半期以降、ほぼ4倍に上昇している点に注目している。最新のVdura Flash Volatility Index(Vduraフラッシュボラティリティ指数)によると、エンタープライズ向けSSDのスポット価格は1年前の水準より約6.5倍高くなっており、30TB(テラバイト)のQLC SSDの価格は、30TBのニアラインHDDよりも約16.4倍高くなっている。
IDCのジェフ・ヤヌコヴィッツ(Jeff Janukowicz)氏も、現在のスーパーサイクルがどれほど長く続くかについて語った。同氏は、米国の主要なハイパースケール・データセンター企業の一部による設備投資(capex)額が増加しており、以下に示すように、2026年にはスウェーデンのGDPを上回る可能性が高いと指摘した。言うまでもなく、米国以外の企業を含めれば、この投資額はさらに膨らむことになる。
同氏はまた、AI環境の構築に伴い、データセンターの設備投資予測が時間の経過とともに増加しており、エンタープライズインフラ支出は2025年から2030年の間に24%のCAGRで推移すると予測されていることを指摘した。価格の上昇とエンタープライズ向けストレージへの注力は、コンシューマーおよびOEM向けのストレージに悪影響を及ぼしており、PCやスマートフォンは以前よりもメモリやストレージの容量を減らして出荷されるか、あるいは大幅に高い価格で出荷されている。
2026年のFMSカンファレンスは、AIが一般的なメモリおよびストレージ技術の価格に与えている影響を浮き彫りにした。現在のメモリおよびストレージのスーパーサイクルは、2028年、あるいはそれ以降も続く可能性があるように思われる。



