どの市場に参入するのか。どんな企業と取引するのか。どの技術を開発し、何に使うのか。気候変動や人権、多様性といった問題について、企業としてどこまで姿勢を示すのか。
企業の日々の判断が、社会との関係を抜きに語れない場面は増えている。一方で、企業が社会的な問題に踏み込めば、「政治的すぎる」「企業は本業に集中すべきだ」という反発も起こる。社会のあらゆる問題について企業が立場を示すことが、本当に望ましいのかという疑問もある。
では、「よい企業」とは何なのだろうか。社会にとって望ましいと思う立場を積極的に示す企業なのか。それとも社会や政治とは一定の距離を置き、本業を着実に行う企業なのか。
社会イノベーションを扱うスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)では、この問いを考えるうえで興味深い議論が続いている。
「ウォーク資本主義」への反発
その一つが、「『ウォーク資本主義』との戦いのなかで、『よい企業』は何をすべきか」という記事だ。「ウォーク(woke)」は、もともと人種差別などの社会的不公正に気づいていることを意味する言葉だった。ところが近年の米国では、企業が社会正義、環境、DEI(多様性・公平性・包摂)などに積極的に関与する姿勢を批判する際にも使われるようになった。
記事が取り上げる代表的な事例が、ディズニーとビールブランドのバドライトだ。ディズニーは、フロリダ州でLGBTQ+に関わる法案への反対を表明し、州政府との激しい対立に発展した。一方、バドライトはトランスジェンダーのインフルエンサーを起用したことをきっかけに大規模なボイコットを受け、売上にも大きな打撃を受けた。こうした出来事だけを見ると、企業にとっての教訓は「社会的、政治的な問題には関わらないほうがいい」となりそうだ。
しかし、SSIRの記事はそこで議論を終わらせない。企業が社会・環境課題に向き合うときに考えるべき「関与のルール」として、4つを挙げる。戦略的であること。一貫した姿勢を貫くこと。責任を持つこと。そして、効果を生むこと。
つまり、問題は単に「関わるか、関わらないか」ではない。その企業が、なぜその問題に関わるのか。そして、その姿勢と実際の行動がどこまでつながっているのか。問われているのは、そこなのである。
その姿勢は「本物」なのか
たとえばバドライトは、若い世代との接点をつくるマーケティングの一環として、トランスジェンダーのインフルエンサーを起用した。もちろん、企業が新しい顧客層との関係を築こうとすること自体に問題があるわけではない。しかしSSIRの記事は、そこに一つの問いを投げかける。その取り組みは、DEIや社会正義を本当に後押ししようとするものだったのか。それとも、社会的なテーマを使って商品を売るためのマーケティングだったのか。



