観光でいえば、名所を点で売るのではなく、地域の歴史、食、祭り、工芸をひとつの滞在物語に編み直す。見学を参加へ、消費を地域との関係へ変え、来訪前の発信から現地体験、帰宅後の購買・寄付・再訪までをひとつの循環として設計する。
旅人が物語の受け手ではなく担い手になるとき、観光は単発消費から継続的な共感経済へ変わる。だから評価も、来訪者数や消費額だけでは足りない。滞在時間、再訪率、地域産品の継続購入、技能継承、地域への収益還元まで測る。文化を費用ではなく将来収益を生む資本としてとらえ、経営、投資、政策の共通言語にする必要がある。
金融仲介から価値仲介へ
政府も、この転換を明確な成長政策として見始めている。7月には、発起人に麻生太郎副総裁や岸田文雄元首相らが名を連ね、地域未来議員連盟が発足。「稼げる地域」へ向けた動きが本格化している。私は議連と連動する「価値デザイン文化会」に民間プロデューサーとして参画するが、そこで具体的に議論しているのは、地域の文化資源を発見・編集する「地域編集部」、蔵や古民家を宿として体験拠点として結ぶ「まちやど」、地域IPと夜空を組み合わせたナイトタイムコンテンツ振興、フィジカルAIと匠の技術活用、ガバメント・デジタルツインの活用の仕組みなどである。
文化を守るだけでなく、再投資する循環をつくる。そのエコシステムにおいては、預金残高約161兆円を有する信用金庫254行と、約348兆円を有する地方銀行99行がキープレイヤーとなる。地域金融機関が、地域の文化的・感性的価値を海外需要と収益計画へ翻訳する「目利き」機能、つまり「地域価値デューデリジェンス」機能を拡張できれば、観光活性化と文化戦略を融合させた産業振興につながるだろうと考えている。
モノの輸出だけで成長を描く時代は終わりつつある。今後、日本が磨き、輸出すべきものは「何を豊かさとするのか」という価値観そのものだ。「意味の取引」はもう始まっている。今こそ、その市場をつくる時である。


