こうして考えると、モンハナシャコのこうした生存戦略がいかに奇妙であるかは、いくら強調しても足りないほどだ。キャビテーションは、船のプロペラや潜水艦の部品を徐々に浸食することがあり、船舶工学で頻繁に取り上げられる現象だ。モンハナシャコは、この物理的な原理を、人間より数百万年も前に武器化していた。
このパンチは時に、獲物に壊滅的な衝撃を与える。甲殻が割れ、脚が折れ、組織は鈍器で殴られたような傷を負うと同時に、キャビテーション気泡による二次的な衝撃波のダメージを受ける。自分より大きなモンハナシャコに遭遇したカニは、長いこと追いかけられたり、格闘したりすることはおそらくないだろう。あっという間に粉砕されて終わってしまうだけだ。
改めて言うが、モンハナシャコが備える武器には、自らに危険を及ぼしかねない側面がある。キャビテーション気泡が崩壊すると、相手を選ばずエネルギーが放出される。そのためモンハナシャコ自身も、多くの生体物質にダメージを与えるであろう威力に繰り返しさらされ、それに耐えなくてはならない。こう考えると、ダクティル・クラブの頑丈さはますます印象的なものになる。
モンハナシャコのパンチをつくり上げた進化的な軍拡競争
モンハナシャコのパンチ力を「過剰」と評する人たちもいる。必要以上にスペックが高く、まるで漫画のようだと言うのだ。しかし進化は、何の理由もなく行き過ぎたりはしない。これほどのコストを要する能力が現れるということは、環境に何らかの大きな要因があるのが普通だ。モンハナシャコの場合、その要因とは装甲だった。
硬い甲殻を持つ獲物は、栄養価が豊富に含まれているが、知っての通り非常に食べにくい。海の生き物にとって、甲殻を割る行為は常に困難であり、同時にチャンスでもある。つまり、モンハナシャコの初期の祖先は、獲物に少しでも強い衝撃を与えることで、競い合うほかの生き物がなかなか捕まえられない獲物を入手できたはずだ。パンチ力が強くなればなるほど、より多くのカロリーを摂取し、より安定して餌を手に入れられただろうし、競争相手が減った可能性がある。
そうした強みは、進化とともに積み重なっていったはずだ。獲物となる種が進化して、もっと分厚い甲殻や強力な防御手段を身に着けるにつれ、捕食者には、それを克服するのに必要な圧力が新たにかかった。この種の相互適応は「進化的軍拡競争」と言われている。獲物が身を守る術を進化させたら、捕食者は、もっと優れた武器を手に入れるべく進化しなくてはならない。
モンハナシャコは、こうしたサイクルがエスカレートした果てに、現在の姿になったと見られる。選択圧は、いくつもの特質を同時に強化した可能性が高い。
・より強力な捕脚
・より効率的なエネルギー貯蔵
・エネルギーをより素早く放出できる仕組み
・繰り返す衝突に耐え得る身体構造
重要なのは、こうした特質が同時に進化しなければならなかった点だ。より素早くパンチを繰り出せても、構造的により強くならなければ、自らを傷つけてしまうリスクがある。身を守る甲殻を強くしても、スピードを上げなければ、獲物の甲殻を効率的に割ることはできない。だからこそ進化は、この強力なパンチを機械的仕組みに組み込まなくてはならなかった。
モンハナシャコが生体力学の研究者にとって実に魅力的な存在であるのは、こうした理由からだ。モンハナシャコの捕脚は、以下に挙げる複数の物理的な問題を一度に解決できる、相互調整された解決策なのだ。
・エネルギーをどうやって蓄えるか
・水中でエネルギーをいかに素早く放出するか
・獲物の甲殻をどうやって破壊するか
・パンチで生じる衝撃をどうやって耐えるか
そうして誕生したのが、小さいながらも、破壊のために作られたとしか思えない生き物なのだ。


