サイエンス

2026.08.29 18:00

1万Gの加速度で獲物を粉砕するモンハナシャコ、驚異の生体力学

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パンチには、「ダクティル・クラブ(dactyl club:指節の棍棒)」と呼ばれる硬い部位が使われる。ハンマーのようなもので、繰り返される高エネルギーの衝突に耐えられる特別仕様だが、この点が非常に重要だ。というのもモンハナシャコは、技術者なら嫌というほど承知している一つの問題に突き当たるからだ。つまり、「反動」だ。

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モンハナシャコは、パンチを繰り出すたびに、標的に対して強烈な衝撃波を与える。しかしその反動は、モンハナシャコ自身の捕脚にもそのまま返ってくる。自分の身体構造を補強しておかなければ、自らのパンチが何度もつくり出す衝撃の力で、捕脚は砕けてしまうだろう。そのためモンハナシャコは、複雑に重なり合った層状構造へと進化し、反動で返ってくる強力なパワーを分散できるようになった。この構造は現在、材料科学者の研究対象になっている。

モンハナシャコには、なんとも魅力的な矛盾が存在する。宝石のような色彩を帯びた南国風の姿は、装飾品のように見えるし、飾っておきたくなるほどだ。その一方で、材料科学研究にインスピレーションを与える高度な生体力学的武器を備えているのだ。

モンハナシャコのパンチが破壊的威力を持つ理由

指摘しておくべきは、モンハナシャコがそのとてつもなく強力なパンチを、むやみやたらと繰り出しているわけではないことだ。そのパンチは、狩りをしたり身を守ったりするためのツールであり、とりわけカニや巻き貝、二枚貝といった硬い甲殻を持つ獲物に対して使われている。

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しかし、パンチそのものは、その全体像の半分を伝えるにすぎない。2005年に『Journal of Experimental Biology』で発表された論文では、1発のパンチが二重の打撃を与えることが明らかになった。研究者はこれを「ダブルパンチ」と評したが、言い得て妙だ。

モンハナシャコの捕脚が水中で極端なスピードで加速すると、その後方には、圧力の低い領域が生じる。すると、キャビテーションという現象が起きる。要するに、水中にごく微小な気泡が形成されるわけだ。これらの小さな気泡は瞬時に弾けるが、それによって、強烈な衝撃波と突発的な熱、二次的な力が生まれる。

そのため、獲物は事実上、衝撃を2度受けることになる。1度目は捕脚そのものによる衝撃で、2度目はそのミリ秒後に生じるキャビテーション気泡による衝撃だ。

高速撮影された研究映像を見ると、1度目の衝撃後に襲ってくるキャビテーション気泡の崩壊による威力は、かなり強力であることがわかる。捕脚による直接的なパンチで獲物をノックダウンできない場合でも、キャビテーション気泡による衝撃が、獲物の組織や甲殻に損傷を与え続けることもあるのかもしれない。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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