生産性がスピードと量を意味するなら、AIは常に勝つ。いま本当の優位性になるのは、機械にはできない人間の力、すなわち気づき、内省し、選択する力である。
私たちは、生産性を成果で定義する文化の中で生きている。より多く働けば、より多くの成果が生まれる。この見方は完全に間違っているわけではないが、現代における形の見えにくい仕事の現実を反映しているとは言えない。
「人類の歴史の大部分において、仕事は非常に目に見えやすいものだった。農業、製造、建設に携わっていれば、生産性は活動量や産出量と直結していることが多かった」と、リーダーシップ開発などを手掛ける豪ByMany(バイメニー)のリーダーシップ・パートナーであり、『Good Work: Transform Your Work from the Inside Out』の著者であるキャスリン・ペイジ(Kathryn Page)博士は語る。「問題は、私たちがその論理をホワイトカラーなどの知識労働にまで持ち込んでしまったことだ。知識労働では、判断力や創造性、問題解決、学習、そして対話の質から価値が生まれる度合いがますます高まっている。これらは可視化も定量化も難しい」
ペイジは、こうした文化的継承によって、私たちは生産性を目に見えるもの、例えばメールへの返信や会議、オンライン時間、完了したタスクと同一視するようになったと考えている。
もちろん、活動は生産性に必要な要素である。「人々には、自分のアイデアを実行に移してほしい。1日中デスクに座って口先だけのアイデアを語っているだけでは意味がない」とペイジは言う。「私が懸念しているのは、私たちが時にインプットを成果と混同してしまうことだ。洞察ではなく即応性を、インパクトではなく忙しさを、意味ある貢献ではなく予定で埋まったカレンダーを評価してしまう」
その結果として生じるのが、米ジョージタウン大学のコンピューター科学の教授でベストセラー作家でもあるカル・ニューポート(Cal Newport)が「疑似生産性」と呼ぶものだ、とペイジは言う。私たちは「どれだけやっているか?」ではなく、「人々は何を、どのような人間的コストを払って生み出しているのか?」と問うべきだという。
2つのモード、1つの問題
知識労働時代の生産性を理解するために、ペイジは英国の研究者メーガン・レイツ(Megan Reitz)が説く「実行モード(doing mode)」と「余白モード(spacious mode)」を引き合いに出す。
「絶え間ない活動は、レイツが『実行モード』と呼ぶ状態に私たちをとどめる」とペイジは言う。「実行モードにいるとき、私たちは行動し、反応することに集中している。もちろんこのモードは必要だ。しかし、それが唯一のモードになると、レイツが『余白モード』と呼ぶもの、つまり、内省し、関係性を築き、気づき、状況を別の角度から見る力が押し出されてしまう」



