レジリエンス(回復力)を性格特性として扱うのはあまりに簡単だ。「もともとタフに生まれついた人がいる」などと語られがちだが、研究の蓄積はそれが正しくないことを示している。レジリエンスの多くは開発可能であり、伸ばすことができる。私たちのコントロール下にあるのだ。
例えば、中国の高校生1567人を対象とした新たな1年間の追跡調査では、レジリエンスは「タフさ」というよりも「時間に対する私たちの捉え方」に関わるものである可能性が示された。
華南師範大学の研究者である熊冠星(グアンシン・シオン)氏らは、10代の若者たちのショート動画の視聴習慣と、「学業のしなやかさ(academic buoyancy)」、すなわちテストや課題での不本意な結果といった日常的な学業ストレスから立ち直る能力を追跡した。
その結果は興味深いものだった。ショート動画の多用は、しなやかさの低下、つまりレジリエンスの減退を予測した。それは、生徒たちの「未来感覚」を縮小させることによってもたらされた。言い換えれば、短尺で矢継ぎ早に流れる動画を大量に視聴した結果、長期的に物事を考える能力が実際に損なわれていたのだ。それが結果として、挫折を受け止める力を奪っていた。論文のタイトルは端的にこう述べている。「未来のビジョンなくして、現在の忍耐なし」と。
研究者が1年間、10代のスクロールを観察して分かったこと
研究チームは同じ生徒たちに6カ月ごとに3回、1年間にわたり調査を実施し、彼らの「時間的自己制御(Temporal Self-Regulation)」を評価した。時間的自己制御理論によれば、行動とは、目先の衝動と長期目標が要求する努力との継続的な緊張関係の結果だ。例えば、勉強の見返りは数カ月後にやってくるが、面白いショート動画を見る見返りは数秒で得られる。
研究者らは、アルゴリズムによって途切れなく与えられる報酬が、10代の若者たちの時間そのものの体験、特に「未来時間展望(future time perspective)」を変えるのではないかと考えた。つまり、ショート動画(TikTokなどを想定)を多く視聴する生徒ほど、未来を思い描き、現在の行動を長期的な結果と結びつける能力が低下するのではないかと考えたのだ。
データが示したのはまさにそれだった。調査開始時点で動画依存の度合いが高いと報告した生徒は、6カ月後と1年後に、しなやかさの低下を示し、未来時間展望がその効果の大部分を担っていた。逆方向のループも確認された。開始時にしなやかさが高かった10代は、6カ月後に動画依存を報告する可能性が低かったのだ。もろさとスクロールは互いに助長し合い、双方を悪化させる。
感情知能(EI)で時間の視野を広げる方法
感情知能とは、自分自身の感情を認識、理解、管理し、同時に周囲の人々の感情を認識し影響を与える能力を指す。これは4つのコアスキルに分かれる。自己認識、自己管理、社会認識、そして人間関係管理だ。感情知能を測定するには、心理学者は妥当性が検証されたツールを使うことを推奨している。
時間の視野があなたのレジリエンスに影響するという熊氏の発見は、自己管理(EIの2番目のコアスキル)を改善するための強力な戦略として活用できる。
自己管理に関するアドバイスの多くは「衝動制御」の考え方を中心にしている。深呼吸をしたり、セルフトークを改善したり、散歩をして気分を整えたりするといった手法だ。しかし、時間の視野を意識し、それを広げることで、目の前の挫折や成長・学びの機会を俯瞰的に捉え、レジリエンスを高めることができる。
時間の視野を広げる方法
絵を描くとき、地平線はすべての対象物にスケール感を与える。それを消してしまえば絵は平面的になる。コーヒーカップと山が突然同じ大きさに見えてしまうのだ。未来を実感できない人にも同じことが起きる。目の前の障害と長期的な目標が、突然すべて同じ重要度に感じられてしまう。しかし当然、最も重要なのは長期的な目標である。
自身の時間の視野を広げるために、次に挫折に直面したときは、以下の4つのステップを試してみてほしい。
- おおむね3年先の目標を設定する。そうすれば、具体的にイメージしやすくなる。自分の役割(キャリア)、執筆中の原稿、学位などだ。期限を設けることで、明確な未来を描くことができるようになる。
- その目標を頻繁に目にする場所に置く。スマートフォンのロック画面や、モニターに貼ったインデックスカードなどだ。ショート動画のスクロールに気を取られてしまうのは、それが「努力を要しない」からである。だからこそ、未来の目標を視覚化することも、できるだけ労力がかからないようにする必要がある。
- 挫折に直面したときは、自分に1つ問いかける。「この障害は、私の3年後の目標を揺るがすものか、それとも今日の予定を狂わせるだけか」。ほとんどの障害は、翌日か翌週にしか影響しない。それを認識するだけで、すべてが変わる。
- スマホに手を伸ばす動作を「合図」にする。スマートフォンの待ち受け画面やパソコンのデスクトップ背景に目標を設定する。そうすれば、動画を見たりSNSをスクロールしたりしようとスマホに手を伸ばしたとき、最初に3年後の目標が目に入る。やがて、ショート動画を見たいという欲求自体が、より大きな目標を思い出すきっかけに変わるだろう。
この研究を実践に生かす
レジリエンスは、困難な瞬間だけに築かれるものではない。困難な瞬間と比較できるほど鮮明な未来像を持ち続けることで、事前に築かれるのだ。だから、スクロールを減らそうとする前に、その代わりに何をしたいのかを具体的に決めよう。



