2005年の創業以来、中堅・中小企業のM&Aに向き合い続けてきたオンデック。同社は今、M&A・投資・コンサルティングという3つの機能を有機的に連携させながら、企業の持続的な成長に伴走する存在へと進化を遂げつつある。2025年8月に新設したオンデックコンサルティングも、その一手だ。支えているのは、事業価値を見抜き、経営者の決断に寄り添い続けてきた20年の現場知見だ。その実像と、オンデックが描く新たな挑戦に迫る。
M&Aの現場において、決算書の数値を機械的にとらえれば「支援困難」と判断されるような案件は少なくない。赤字が続き、資金繰りがひっ迫して半年後の継続すら危ぶまれる。そんな極限状態の相談を持ち込まれたとき、アドバイザーがどう動くかに、その組織の真価が表れる。
オンデック 西日本M&Aアドバイザリー部の西川勝悟(以下、西川)が担当した案件も、まさにそのひとつだった。とある専門業界向けのプラットフォームを運営していた譲渡対象企業は、赤字かつ債務超過に陥っており、キャッシュが枯渇寸前で、通常であれば受託に二の足を踏む状態にあった。だが、西川は同社が保有するあるアセットに目をつけた。
「その企業が運営していたプラットフォーム事業には、多くの会員基盤という強力なアセットが存在していました。財務の数値には現れなくとも、その本質的な事業価値をどこに見出し、どの買い手企業に接続すれば最大化できるか。そこを検証し続け、買い手候補として想定される企業へのアプローチを構築していきました」(西川)
その結果、西川は表面的な赤字や債務超過という数字の裏に隠された会員基盤の本質的な価値を見極め、それを対象業界のビッグデータを扱う大手企業の事業とどう結びつければシナジーが最大化されるかという論理を構築。限られたスケジュールのなかで粘り強い交渉とアプローチを重ね、売主の希望に沿う数億円規模での成約へと導いた。
M&Aアドバイザリー本部長の山中大輔(以下、山中)も、「決算書の数値だけで企業評価が完結するわけではない。買い手がその事業をどう活用して拡大していけるかという文脈まで踏み込み、数字の背景にある強みに光を当てることがアドバイザーの役割です」と指摘する。
こうした案件ごとの緻密な分析やアプローチの裏には、目先のM&Aの成約のみを目的としない同社のスタンスがある。譲渡を検討する経営者に対し、「このM&Aを通じて本当に何を実現したいのか」を最初に確認し、条件交渉の過程で気持ちが揺れ動いても、本来の目的に立ち返る対話を重ねる。その先にある企業の持続的な成長まで見据えて伴走することが、オンデックのM&Aアドバイザリーの本質だ。
信頼の連鎖がもたらす「構造的必然」
なぜオンデックのアドバイザーは、こうした一社一社の課題に深く踏み込むことに時間を割くことができるのか。その背景にあるのは、数打てば当たるような新規開拓の絶対数を追う発想ではなく、外部のパートナーや支援組織といった多様なハブとの間に築かれた、盤石な紹介基盤を軸とするリファラル型のビジネスモデルである。
M&A市場において、ダイレクトアプローチに依存する手法は消耗戦になりがちであり、双方にミスマッチを生む要因になりやすい。同社はそうした手法のみに頼るのではなく、専門チームごとに日々のリレーションシップ・マネジメント(RM)を徹底している。
「案件の進捗報告や紹介の依頼に終始するのではなく、例えば各種の勉強会を実施したり、候補企業への仕掛け提案をともに行うなど、紹介元となる組織にとってもプラスとなる実務的な情報や支援を提供しています。日々のやり取りのなかで相手の課題解決に寄与し続けること以外に、盤石な信頼関係を築く方法はありません」(西川)
このアプローチの本質は、個人の営業力に依存するのではなく、「案件が発生する手前の段階で、信頼のインフラをあらかじめ構築しておく」という点にある。同社の支援でM&Aを経験したオーナー経営者が、別の経営者から相談を受けた際に「オンデックに相談してみるといい」と自然に名を挙げる。あるいは、協業した外部のパートナーが別のネットワークを同社に引き合わせる。そうした数珠つなぎの信頼関係が組織的に機能しているからこそ、アドバイザーは目先の数値を追うだけの短期的な営業活動から切り離され、企業が抱える課題の解決に全力を注ぐことができる。紹介の多さは実績の表れだけではなく、高度なコンサルティングを成立させるための「構造的必然」として機能しているのだ。
支援のあり方は、地域性や企業の状況、経営者の動機によっても変わってくる。西日本エリアを中心に担当する西川は、「製造業や建設業、運送業などのいわゆるオールドエコノミー系の相談が多く、東京と比較すると小規模な案件が目立つ。また、従業員を大切にする情の厚いオーナーが多い」と語る。
他方で、東京拠点においては、より若い世代の起業家や、最初からM&Aを視野に入れて事業を立ち上げた経営者からの相談も少なくない。山中自身、30代の若手経営者によるイグジットや資本政策の支援を手掛けてきた経験をもつ。事業承継を主眼とする案件から、成長戦略の一環としてのM&A、さらにはファンドを活用したスキームまで、求められる支援のグラデーションは幅広い。
「東京も大阪も、根底にある『企業の持続的な成長をどう支えるか』という軸に変わりはありません。ただし、経営者が抱く動機やスピード感の違いに対して、アドバイザー側がどれだけ引き出しをもてるかが重要になります」(山中)
未経験からプロフェッショナルへ育つ育成の仕組み
高度なディールメイクを担うアドバイザー陣は、どのような環境で育っているのか。
現在、オンデックには約40名のアドバイザーが在籍するが、その大半はM&A未経験からのスタートである。同社では座学での体系的な研修と、経験値の高いメンバーが伴走するOJTの仕組みを整備。早い人で半年、平均して1年から1年半の期間をかけ、段階的に実務経験を積ませるアプローチをとっている。
銀行での法人営業の現場を経てジョインした西川や、証券会社やベンチャーキャピタルを経て参画した山中のように、前職での専門性や財務の知見をもつメンバーも多い。しかし、彼らは口をそろえて、「知識の有無以上に、アドバイザーとしてのスタンスこそが、成果に直結する本質だ」と語る。
「ベンチャーキャピタル時代に、創業期から成長期まで多くの企業と向き合ってきましたが、決算書の数字の裏にある事業の本質的な強みや課題を見抜く眼力は、現在のM&Aアドバイザリー業務にもそのまま生きていると感じます。ただ、この業務において最も重要なのは知識やスキルだけではないんです」(山中)
山中が定義する、この仕事に向いている人材の条件は明確だ。
「知識やスキル以上に、諦めない熱意があるかどうか。案件のどんな局面でも自分が最後の砦だという『ラストマンシップ』、すなわち壁にぶつかっても簡単には引き下がらず、最適な解決策を最後まで捻り出し続ける姿勢をもてるか。それがすべてです。ディールの途中で直面する困難な局面から逃げず、自分ごととして最後までやり切る覚悟は、オーナーや社内のメンバーにも必ず伝わり、突破口を開く力になります」
西川もその見解に強く同意する。
「本気で向き合えば、その熱量は必ず相手に伝わる。プロジェクトには予期せぬ行き詰まりが必ずあるが、こちらが全力で臨めば相手の心は動き、膠着した状況を打開できる。知識やスキルも重要だが、この熱量を持てるかどうかが、プロとして大成する分かれ目です」
評価制度においても、成約金額の大きさだけが基準になるわけではない。受託の数や日々の活動内容、組織への貢献度も重要な指標となっている。上場企業という基盤を持ちながらも、個々のメンバーが主体的に組織や案件を動かしていく文化が根づいている。
「コンサルティング」の機能がもたらす拡張
個別のディールメイクを重ねる一方で、市場における企業のニーズは多様化している。そうした背景から新設されたのが、オンデックコンサルティングだ。同社の取締役も務める山中は、設立の背景について次のように話す。
「今すぐの売却ではなく、数年後のM&A実現に向けて伴走してほしいというニーズや、資金調達、組織体制の整備など、相談の内容は多岐にわたります。そうした多様な経営課題に対して最適なソリューションを提供するため、グループ内にコンサルティング機能を実装しました。アドバイザー業務とコンサルティングを横断することで、企業に対する支援の選択肢は確実に広がっています」(山中)
個別の案件を点として処理するのではなく、ネットワークを通じて業界内の構造や再編につなげていく視点も同社の特徴だ。山中が過去に担当した美容業界の大型ディールでは、個別の売買にとどまらず、異なる強みをもつ複数の経営者間を引き合わせ、ファンドを活用した再編のスキームへと発展させた事例もある。
「一件ごとの積み重ねが、結果的に業界内のネットワークを広げ、生産性の向上や再編の契機になっていく。そうした広がりを意識しながら、組織として対応できる領域をさらに深めていきたいと考えています」(山中)
M&A、投資、コンサルティングという3つの機能の統合は、単なる事業の多角化ではない。それは、目先の売買を追うのではなく、企業の持続的な成長と向き合い続けるという同社のスタンスを、組織として実装した形にほかならない。現場で磨き上げられたディールメイクの精度と、強固な信頼の連鎖。その総体が、これからの市場でどのようなインパクトを生み出していくのか。今後の展開に期待が高まる。
やまなか・だいすけ◎オンデック取締役M&Aアドバイザリー本部本部長、オンデックコンサルティング取締役。大阪府出身。大学卒業後、大手証券、ベンチャーキャピタルを経て、2015年にオンデックに取締役として参画し、東京拠点の立ち上げを担う。
にしかわ・しょうご◎オンデック 西日本M&Aアドバイザリー部ディレクター兼事業投資部ディレクター。香川県出身。大学卒業後、大手銀行で12年間にわたり法人営業業務に従事した後、オンデックへ入社。



