モデルナの株価はこの1年で急騰した。なかでも1営業日で時価総額を2倍以上に押し上げたのが、米国時間2026年8月19日の出来事だ。
この日、メルクとモデルナは、個別化がんワクチン「インティスメラン・オートジーン(intismeran autogene)」とキイトルーダ(KEYTRUDA。一般名ペムブロリズマブ。免疫にかかっているブレーキを外し、がんを攻撃させる薬)を併用する悪性黒色腫(メラノーマ)を対象とした第3相臨床試験が、あらかじめ定めた評価項目を達成したと発表した。だが、その日に何が起きたかを追うよりも、それ以前にどんな兆候が見えていたのかを問うほうが的を射ている。
ここで挙げる情報はいずれも、試験結果が公表されるよりはるかに前から公開されていた。なかには2025年初めにさかのぼるものもある。
メラノーマ治験の患者登録はすでに終わっていた
モデルナは2024年第4四半期の決算報告の時点で、すでに肝心の事実を伝えていた。メルクと共同で開発するインティスメランは、患者一人ひとりのがんに合わせて設計する個別化ネオアンチゲン療法だ。
ネオアンチゲン(neoantigen)とは、がん細胞の変異によって生じる、正常な細胞にはない目印を指す。このインティスメランは、手術でがんを取り切った後の再発を防ぐ術後補助療法として、第3相のメラノーマ試験に供されていた。その試験の患者登録が、すでに完了していたのである。
この試験は、同社が承認取得に向けて優先する10のプログラムの一つに数えられていた。患者登録を終えた試験は、もはや被験者集めの問題を抱えていない。あとは被験者を数え、主要評価イベント(がんの再発や死亡などの検証対象となる事象)が積み上がるのを待つ段階に入る。いつ終わるのか、そしてどんな結果になるのかは、依然としてわからないままだった。
コスト削減と提携先のメルクが、結果を待つ期間を支えた
決算に並ぶ数字は、経営が苦しい会社の姿を映していた。株価上昇が始まる前に提出された最後の四半期報告である2025年度第2四半期の決算によれば、過去12カ月の売上高は30億6000万ドル(約4865億円)で、前年同期比38.8%の減少だった。過去12カ月の営業利益率はマイナス107.1%である。



